自身の性被害について防衛省に調査を求め、署名を手渡す元陸上自衛官の五ノ井里奈さん(左)=8月、同省
自身の性被害について防衛省に調査を求め、署名を手渡す元陸上自衛官の五ノ井里奈さん(左)=8月、同省

 社会問題化して久しいセクハラだが、いまだになくならない。一体なぜなのか。セクハラの現状と課題について、多賀太・関西大学教授に聞いた。AERA 2022年11月21日号の記事を紹介する。

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 セクハラに対する男性側の意識は、2極化してきていると感じます。加害者にならないよう非常に注意している人がいる一方、飲み会で性的な発言をするなど、旧態依然とした理解のままでいる人も多いようです。

 背景として、どこかで女性を蔑視、または性的な存在としてのみ見ていて、相手が対等な人格を持った存在だという意識が欠如している面があると思います。私たちの社会に「女性は性に抑制的でなければ」としつつ「男性は性的に奔放でもよい」といった「男女の二重規範」の文化が残っていることも影響しているでしょう。また、職場でも男性管理職が圧倒的に多く男性の方がパワーを持ちやすい現状なので、そのパワーを本来の職務を超えたところで使ってしまったり。上司の男性が部下の女性に一方的に恋愛感情を抱いてしまい、セクハラに至るケースなどがこれにあたります。

 そうなりやすい理由の一つが、子どものころからハラスメント文化の中で育つこと。男性同士の中で、たとえば性的なことでからかわれたり性器をつかまれたりパンツを下ろされたり。多くの男性がそんな被害・加害体験があるのでは。そんな中で、「ハラスメントがいかに深刻な人権侵害か」に対する感覚が、麻痺してしまっている。

■男性同士での人権侵害

 大人になっても、新入社員の歓迎会の余興で裸にさせられたり、女性に同じことをしたら明らかに問題だと思えることでも、「怒ったりしたらつまらん奴と思われる」と我慢して傷ついていたり。男性も男性同士の関係の中でハラスメントを受け、人権を侵害されてきている。そこに敏感になることです。それが巡り巡って、男性から女性に対する性加害を減らしていくことにもつながります。

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