岸田文雄政権が米国製の巡航ミサイル「トマホーク」を導入しようとしている。だが、政権が期待するような敵基地攻撃能力(反撃能力)を持つことは不可能だ。2022年11月21日号の記事を紹介する。
【写真】陸上自衛隊が保有する国産のミサイル「12式地対艦誘導弾」の発射装置
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米国と韓国軍は10月26日から艦艇20隻以上で合同演習を開始、同31日からは航空機240機による大規模な航空攻撃演習を行った。これに対し航空戦力が無に等しい北朝鮮は各種のミサイル約30発を発射して対抗、米国に届くとされる「火星17」を発射したがこれは日本海に落下し失敗に終わった。北朝鮮の弾道ミサイル戦力が増大する一方、米中の「台湾有事」に日本が巻き込まれる危険も生じている中、日本政府は「敵基地攻撃」能力の保有をはかり、米国と巡航ミサイル「トマホーク」輸入交渉を進めている。
だがミサイルを発射するには敵の発射機などの緯度経度を精密に知る必要がある。偵察衛星で撮影できると思う人は少なくないが、これは秒速約7.9キロで地球を約90分で南北に周回し、地球は自転しているから各地の上空を1日1回通過する。固定目標は撮影できるが移動目標を監視する役には立たない。
■役に立たない静止衛星
静止衛星は赤道上空約3万6千キロで周回し、この高度では自転の速度と釣り合うから止まっているように見える。だがその距離ではミサイルのような小さい目標は見えず、発射の熱が分かる程度だ。無人偵察機を敵地上空で旋回させておけば撮影は可能だが、対空ミサイルなどで撃墜される公算が大だ。
米国などでは多数の小型衛星を同一の軌道上に連続的に周回させる「星座衛星」計画も進みつつあり、防衛省も50基の小型衛星導入を検討している。だが50機が次々に南北に地球を回っても衛星が30分間隔で目標地域上空を通るのでは、衛星が通過後に自走発射機がトンネルから出て即時発射が可能な固体燃料のミサイルを立てて発射するのを阻止するのは困難と思われる。50機の衛星を常時周回させるには不調の衛星の取りかえなど維持費も莫大(ばくだい)になりそうだ。