AERA 2022年10月24日号より
AERA 2022年10月24日号より

 就業体験を通して、業界や企業の理解を深められる「インターンシップ」の存在感が増している。企業は学生の情報を採用選考に利用できないが、成績が優秀だった学生を優遇するケースもあるようだ。AERA 2022年10月24日号の記事を紹介する。

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 学生は企業のことをよく知るために、企業は知ってもらうために。両者の思惑が一致して盛り上がるインターンシップ(インターン)だが、実は、それ以外の目的も見え隠れすることがある。キャリアデザインスクール「我究館」の就活コーチ・立川雄太さんはこう話す。

「インターンは学生が自分のやりたいことを仕事でどう実現できるか明確にするという意味でとても重要です。ただそれだけでなく、企業が優秀な学生を囲い込む場というニュアンスがここ数年強くなっています。選考に直結する場でもあるんです」

 政府主導の枠組みに合わせた採用活動をする場合、現在はインターンで得た学生の情報を選考に利用できない。多くの企業のインターン募集ページに「選考とは無関係」と記載されているのはこのためだ。ただ、インターン参加者に早期選考を案内したり、インターンで優秀だった学生を対象に特別選考を行ったりしているケースがあることは公然の秘密だ。就活口コミサイトをのぞくと、「A社はインターン参加で1次面接免除」「B社は内定者の7割がインターン生」「C社は一切優遇がない」といったコメントが並ぶ。

■ウィンウィンの制度

 慶應義塾大学4年の男子学生は大手邦銀のインターンでの経験についてこう話す。

「5人しか参加できない長期インターンで、参加者だけの『選考』が用意されていると案内を受けました。結局自分の考えが変わったこともあって辞退しましたが、内定に直結しているんだろうなという印象でした」

 立川さんは続ける。

「1次面接免除とか早期選考などは序の口で、インターンの成績優秀者を面談に呼び、選考なしで内定を出す企業もあります。インターン経由での採用が大半で一般ルートでの内定がほぼ不可能というケースもある。その分倍率も高く、もはやインターン選考が『本選考』といってもいいレベルになっている。就活に占めるインターンの重要性はさらに高まっていくと思います」

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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