おおたとしまさ/リクルートを経て育児誌・教育誌の編集にかかわり、小学校教員の経験も。最新刊『子育ての「選択」大全』(KADOKAWA)など著書は70冊以上(写真=本人提供)
おおたとしまさ/リクルートを経て育児誌・教育誌の編集にかかわり、小学校教員の経験も。最新刊『子育ての「選択」大全』(KADOKAWA)など著書は70冊以上(写真=本人提供)

 中学入試に向け、親も子も気持ちの起伏が激しくなる今の時期、改めて受験する理由について考えることも大切だ。わが子が幸せになる中学受験とは何か。教育ジャーナリスト・おおたとしまささんが語った。AERA 2022年10月10-17日合併号の記事を紹介する。


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 最近の中学受験では、巧妙に主体性を奪われながら“自主的”に勉強させられている子が見られます。行為の理由が自分の中から湧き上がってくることを主体性と言いますが、大人が望むことをいち早く察知して大人から言われる前にやり出すことがここでいう“自主性”です。行為の理由が自分の外にありますよね。しかも、ああでもないこうでもないと試行錯誤することを禁じられ、高得点を取るための最短距離を進むべく「この教材をこういう方法で解きなさい」と手取り足取り指図をされていると、「自分の中学受験」ではなくなってしまいます。


 そんな状態では、仮に第1志望に合格できても、中学でまったく勉強しなくなってしまったり、不登校になってしまったりするケースがあります。勉強しないで学年ビリをとってくるのは、「もし自分が期待に応えられなくても、自分を愛してくれますか?」というメッセージです。不登校は「もし自分が○○中学の生徒ではなかったとしても、自分のことを誇りに思ってくれますか?」という問いかけです。ありのままの自分がわからなくて、不安でしょうがないのです。

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