(c)Victoria and Albert Museum, London
(c)Victoria and Albert Museum, London

■漫画やアニメからも

 日本の「アリス」人気は独特で、漫画などの「2次創作」から好きになる人もいる。原作者のルイス・キャロルを長年研究する木下信一さん(56)のきっかけは、1980年代に放送されていたロボットアニメ「超時空世紀オーガス」だった。登場するキャラクター名の元ネタが『鏡の国のアリス』であると本で知り、読んだこともなかったキャロルの本を開き、世界観や言葉遊びにはまっていった。

 日本で『不思議の国のアリス』の翻訳本が紹介されたのは明治時代だが、映画の紹介は34年が最初。「日本で『アリス』が認知される上で、ディズニー映画の影響力は絶大だった」と木下さんは言う。アニメ版「ふしぎの国のアリス」は53年に字幕版が、73年と87年に吹き替え版が公開された。丸文字などが流行(はや)った70年代末からのカワイイ文化に乗り、その後のロリータブームも相まって、日本人の脳裏に定着したようだ。

(c)Victoria and Albert Museum, London
(c)Victoria and Albert Museum, London

 アリスコレクターのゆめのゆきさん(64)はこう言う。

「初刊行本の挿絵を担ったジョン・テニエルの絵は、かわいいだけでない不気味さも魅力。そこに大人も惹かれたのでは」

 ゆめのさんは、宮崎駿監督の「となりのトトロ」で、メイが小トトロを追いかけて穴に落ちる場面やバスを見ては「アリス」を感じるという。アリスの影響力や、恐るべし。(朝日新聞文化事業部・高橋友佳理)

AERA 2022年9月26日号

暮らしとモノ班 for promotion
新型「iPhone 16」の実機を試してみた!iOS 18で使い勝手はどう変わる?