東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで開催中の「特別展アリス」を訪れた、青木美沙子さん(photo 写真映像部・高橋奈緒)
東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで開催中の「特別展アリス」を訪れた、青木美沙子さん(photo 写真映像部・高橋奈緒)

「特別展アリス ─へんてこりん、へんてこりんな世界─」展が開催中だ。アリスというキャラクターは、日本のファッションにも影響を及ぼしている。AERA 2022年9月26日号から。

【画像】「トランプに襲われるアリス」など『不思議の国のアリス』の絵はこちら

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「エプロンを着けてふわっとしたドレスにロングの髪の毛。アリスはロリータにとって憧れの存在。この服装でお茶会を楽しむのがセットなんです」

 六本木で開催中の「特別展アリス」の会場に、まるで「不思議の国のアリス」の格好で現れた青木美沙子さん(39)は言った。

 青木さんはいくつものロリータブランドでモデルを務めるカリスマ的存在だ。アリス風コーデだけで10着以上、ロリータの服は千着ほど持っている。正看護師として忙しい毎日を送るが、ナース服以外は365日ロリータの服装に身を包むという。

トランプに襲われるアリス、『不思議の国のアリス』から、ジョン・テニエル画、1898~1900年
(c)Victoria and Albert Museum, London
トランプに襲われるアリス、『不思議の国のアリス』から、ジョン・テニエル画、1898~1900年 (c)Victoria and Albert Museum, London

■変身願望をかなえる

「ロリータの服は自分の弱い部分を隠せる鎧(よろい)のようなもの。イメージはフランス・ロココ調のマリー・アントワネット。『お姫様になりたい』変身願望をかなえてくれるんです」

 フランスのロココ調──。ロリータ文化をそう最初に発信したのは、作家の嶽本野ばらさん(54)の小説『下妻物語』か。後に映画化され、ロリータの服に身を包む主人公・桃子を深田恭子さんが演じ、ロリータブームに火を付けた。

 だが、嶽本さんは、「あれは桃子が言っただけで、本当にロリータがロココからきているわけではないんです。イギリスからインスパイアされている部分が大きいと思います」。

 英国がファッショントレンドの中心だった時代背景もあり、ロリータの服装は英国ファッションの影響を強く受けたようだ。

 英国ビクトリア朝時代生まれの「アリス」は、その時代の中産階級の子どもの服装をしている。「ロリータ女子が好きなアイテムにトランプ、チェス、ウサギ、時計、バラなどがある。こういうものが『アリス』に出てくるのも、アリスがロリータファッションで重要視される理由の一つかと」と嶽本さん。

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