「中干し期間を通常より1週間延長することで、メタンは3割削減できるという試験結果があります」(伍十川さん)

写真:オイシックス・ラ・大地提供
写真:オイシックス・ラ・大地提供
オイシックス・ラ・大地/環境に配慮して作られたコメ、キュウリ、トマトの3品目をオンラインで販売する予定。「見える化」は生産者にとっても選ばれる理由になる(写真:オイシックス・ラ・大地提供)
オイシックス・ラ・大地/環境に配慮して作られたコメ、キュウリ、トマトの3品目をオンラインで販売する予定。「見える化」は生産者にとっても選ばれる理由になる(写真:オイシックス・ラ・大地提供)

 こうした中干し延長の取り組みのほか、農薬や化学肥料・プラスチック資材の使用状況、バイオ炭や堆肥による土壌への炭素貯留の取り組みなどの栽培データを、農水省が作成した簡易算定シートに入力し、弾き出した削減率を星の数で表示するというのが今回の「見える化」の方法だ。

 算出と表示の方法が決まるまでは、紆余曲折があった。例えばかつて09~11年度にも、経済産業省や農水省によりCO2量を算出する試み(カーボンフットプリント試行事業)が行われたことがあったが、広く普及するまでには至らなかった。算定やデータの入手に課題があり、また、CO2排出量が何グラムと表示してもそれがどの程度の意味を持つのかわかりにくかったからだ。農産物の場合、種類やその地域の気候によって取り組むことができる内容には制限がある。例えば北海道と沖縄では燃料や電力の使用量にも大きく差が出てしまう。生産者の取り組みの努力をしっかり反映できるものにしようと、今回の実証では削減した絶対量の比較ではなく、その都道府県または地方の慣行栽培と比較しての相対的な削減率を算定している。

 こうして数値として見える化されることは、脱炭素に取り組んできた生産者にとっても励みになる。

「良い取り組みだと思って進めてはきたが、どれぐらい効果があるかという点はぼんやりしていた。今後農家に示していく上で説明もしやすいし、来年はさらにここを目指しましょうという目標にもなります」(伍十川さん)

■排出量で食材を選ぶ

 こうした産地の取り組みが「消費者に伝わらないともったいない。伝える使命があると考えています」と言うのは、テイクアウト専門おにぎり店・TARO TOKYO ONIGIRI(東京・虎ノ門)のマネージャーの長瀬功一さん。

 同店では、20種類以上の米を食べ比べた結果、冷めてもやわらかいままでテイクアウトにも向くことから、白米のおにぎりにはすべて同JAのひとめぼれ(環境保全米)を使っている。

 商品名やPOPを工夫し、お客さんとのコミュニケーションのきっかけにしながら産地と消費者をつなぐ接点を担っていきたいと意気込む。

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