「この話を他の人にすると『体調に不安がある人が検査場に行くんだろうから、かえって怖いよね』と返ってきて、めちゃくちゃ不安になった。陰性を確認してから帰省を、と考えていたのですが、無料検査場に行くことが、感染リスクを上げるのではないか。帰省そのものをやめることも検討中です」(女性)

 逆ギレの知人からは後に、「すみません、陽性でした」という連絡がメールで来た。

■「孝行したい時に」

 神奈川県に住む女性(54)は、福岡でひとり暮らしをする母親(80代)に会いに行くか否か、揺れている。

「コロナがひたひたと迫ってきている感じ。毎日、誰かしらから『感染した』という連絡が来る。第6波の時は、ここまでじゃなかった」

 帰省をやめる、とすっぱり決められないのは、コロナ禍が始まる直前に父親を突然亡くし、その時の後悔があるからだ。「親・子・孫の3世代で温泉旅行でも」と正月や盆に顔を合わせるたびに話していた。子どもが推薦で大学が決まったタイミングに合わせてようやく旅行日を決めたが、その1カ月ほど前に父親が倒れた。葬儀の時、「孝行のしたい時分に親はなし」のことわざを痛感した。元気な母親と過ごせるのは、両手で数えられる回数もないかもしれない。

 母親は4回目のワクチン接種を終えているが、万が一のこともある。7歳年下の夫は「もうちょっと(コロナの)様子を見てからにしたら」と言う。夫の両親は70代前半で、女性の母親と比べると若い。

「後期高齢者には『もうちょっと』が『取り返しのつかない時間』になることもある。それを夫は分かっていない」と怒りを覚える。

■感染状況をチェック

 厚生労働省による都道府県別の「人口10万人当たりの直近1週間の新規感染者数(発症率順)」をホームページで毎週チェックしているのは、子どもが生まれたばかりの30代夫婦。

「私も夫も実家は本県。10万人当たりの新規感染者数が、住んでいる東京都よりだいぶ下回るようなら、リアル帰省ではなくオンライン帰省にします。オンラインでも子どもの顔を見せられるので」

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