「あなたのいばしょ」に寄せられる相談は1日約1千件。より具体的なサポートのために、書き込まれたテキストの分析作業が進む
「あなたのいばしょ」に寄せられる相談は1日約1千件。より具体的なサポートのために、書き込まれたテキストの分析作業が進む

 若い世代を中心に孤独感を覚える人が増えている。SNSを利用していても結婚をしていても悩みは深い。政府も危機感はあるが、具体的な対策はこれからだ。AERA 2022年7月18-25日合併号の記事を紹介する。

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 埼玉県の会社員男性(32)は大学3年生の時、躁うつ病と診断された。2度の入院を経て、なんとか大学を卒業。症状が落ち着いた昨年、理解のある東京都内のメーカーに正社員として就職した。だが、今も薬は飲み続けている。

 体調に異変が起きたきっかけは、ささいなことだった。進学校の高校から現役で大学に進学。それなりに自分に自信があったのに、入学後に入ったサークルで小さな壁を感じた。

「あれっ?と。ケンカをするとか、特別なできごとがあったわけではないけど、うまくはまらなかった」

 自分の“キャラ”を変えようと無理にテンションを上げたり、それほど必要としていなかったのに彼女を作ってみたり。でも「何をやっても引かれた」。次第に周囲から人がいなくなり、ある日倒れた。

「さみしかったですね。家族が支えてくれたことと、サークルの中にずっと同じ態度で接してくれた先輩が1人いたことに救われました」

 24時間、匿名のチャットで悩み相談を受け付けているNPO法人「あなたのいばしょ」(東京都)は今年2月、20歳以上の約3千人に対し、孤独調査を実施。孤独感がある人の割合は若い世代ほど高く、20代では42.7%に上った。また、孤独を感じている人は、うつ状態や不安障害を抱える傾向が約5倍という結果も出た。

 同NPO理事長の大空幸星(こうき)さん(23)は言う。

「日本では長らく、孤独は高齢者の問題とされてきた。けれど、願望と現実が乖離(かいり)していると感じ、深く悩む若い人はどんどん増えている」

 それは、自殺者数にも表れている。厚生労働省が3月に公表した2021年の調査によると、自殺者の総数は前年より減少した一方で、20代は3.6%増えて2611人に。小中高生も20年は計499人と、いじめ自殺が社会問題になった1986年を上回って過去最多だった。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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