「権力と闘っているみたいな気持ちになりたい人が本土から行って参加しているように感じました。自分を沖縄に重ねているだけで、加害の側にいることに気づいていないのではないかと」

 参院選立候補を決意したのは今年1月25日。きっかけは1月23日に投開票された沖縄県の名護市長選と南城市長選で辺野古新基地に反対する「オール沖縄」が推す候補が相次いで敗れたときの「本土の反応」だったという。

「沖縄に理解があるとされている議員から、『また頑張ればいいよ、次があるよ』といった声が多く発せられるのを見て、頭にきたんです」

 基地を押し付けている側が、基地を押し付けられている側に「頑張れ」と言う欺瞞(ぎまん)。「そういうのを、いい加減やめなきゃいけないと思って」

 選挙演説や集会では基地引き取りについて「反対でも賛成でもいいから、一度真剣にテーブルにつこう」と訴えた。「(東京の)お台場が辺野古みたいになると具体的に想像できれば、今のように7割以上が日米安保や在日米軍基地を肯定する世論も変わると思います」

 しかし、批判の矢はあらゆる方向から飛んできた。左派からは「基地はどこにも要らない」と突き上げられ、右派からは「国防はどうするんだ」と一喝された。

「右の人には『沖縄だけにこだわって国防の議論の入り口を狭めるべきじゃない』と反論し、左の人には『それでもう50年過ぎたけど、どうなりましたか』と問い返しました。『上の世代のあんたたちが残してきた課題を、私は子どもに残すのは嫌だからね』と」

 中村さんは自衛隊の南西諸島配備にも反対している。

「神道思想家の葦津珍彦氏は、『自衛隊は有事において犠牲的精神で任務を遂行し、国家と市民の信頼を取り持つ意義がある』としています。軍隊や自衛隊という組織が成立するのは、多くの人の理解や信頼関係があってこそ。でも、沖縄の先島諸島に配備を進めている自衛隊は地元住民に対する説明責任も果たさず、弾薬庫までつくってしまった。『建軍の本義』を失った組織が有事に国民や市民を守るとは思えません」

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「沖縄にはずっと、民主主義なんてなかった」