円安が止まらない。6月15日には1ドル135円台半ばまで下落し、実に24年ぶりの水準になった。円安はどこまで進むのか。AERA 2022年6月27日号の記事を紹介する。
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京都府のスクールカウンセラーの女性(64)は「ガソリンを入れるたびにずしりとくる」という。コロナ禍で電車から車通勤に変えた。1回3千円ほどだった給油代は、最近は4千円を超す。「買い物は週1回の特売日だけになりました。すぐに生活に困るわけではないけれど、いつまで働けるかわからないから」
円安は、若い世代や低所得者層により強いダメージを与えている。だが、苦境をあざ笑うかのように、日銀の黒田東彦総裁は6月6日の講演で「家計の値上げ許容度が高まっている」と発言、撤回に追い込まれた。
発言の根拠の一つが貯蓄の増加だ。
総務省が5月に発表した家計調査によると、2人以上世帯の2021年の「平均貯蓄現在高」は1880万円で、比較可能な02年以降最多だった。日銀の試算では、コロナ禍が始まった20年から21年末までにたまった金額は計50兆円とする。
日本総研調査部の村瀬拓人副主任研究員は「家計が値上げを受け入れているとは言えない」としつつ、「データを見る限り、過去の物価上昇局面と比べ『耐久度』が上がっているのは事実でしょう」と指摘する。
ただ平均貯蓄を押し上げているのは一部の富裕層で、世帯の約3分の2は平均を下回る。
「今後は貯蓄やこれまで得た給付を吐き出すことになる。貯蓄を取り崩すことは将来不安につながります。円安が続く限り、コロナ禍が収束しても以前のレベルまで消費が盛り上がることもないでしょう」(村瀬さん)
では円安はどこまで進むのか。米国の金利はさらに上がることが確実だが、並行して円安が進むわけではないという。今の相場は今後の利上げをかなり先まで織り込んでいるためだ。
「一時的にはもう少し進むかもしれませんが、利上げの天井が見えてくれば状況は変わります。今年後半から来年にかけて円安傾向は歯止めがかかるのではないでしょうか」(同)