40代以上の中高年の労働者が、相次いでリストラの対象になっている。デジタル化やコロナ禍のため、好業績でも人員削減に踏み切る企業があるほどだ。どんな心構えで働けばいいか。いざというときはどうするべきか。AERA 2022年6月20日号の記事から紹介する。

【図】「早期・希望退職」を募集した主な企業

リストラの主な対象となっているのは、40代以上の中高年。専門家は、ワークルールに詳しくなり、労働組合や労働局、弁護士らに相談してほしいと助言する(撮影/写真映像部・東川哲也)
リストラの主な対象となっているのは、40代以上の中高年。専門家は、ワークルールに詳しくなり、労働組合や労働局、弁護士らに相談してほしいと助言する(撮影/写真映像部・東川哲也)

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 もはやリストラは、正規、非正規にかかわらず誰にとっても特別なことではなくなった。働き方評論家で千葉商科大学准教授の常見陽平さんは100年に1度の働き方の変化が毎年起こる時代になったと指摘し、労働者の心構えが大切だと説く。

「黒字リストラは、特に今はDX(デジタル技術による変革)が進み、稼ぎ方が変わるなか、事業の方向性、事業部、職種、年次により早期退職者が選別されている印象です。全員がハッピーとはなりませんが、大企業では退職金の上乗せで早期希望退職に応じると定年まで働いた金額と同程度もらえる場合も少なくありません。そうした場合、中高年であっても他の企業や民間就職以外の選択肢でチャレンジできる可能性もあります」

「正規雇用で働く人は今のうちに自分の会社の未来はどうなるのか、このまま会社に残るか外に出るか、外に出たときにどうなるか、さまざまなシナリオを考えておくべきです。非正規で働く人は不安定な状態で働いているという認識が大切。いざというときのため、働くときに必要な法律や決まりなどのワークルールに詳しくなることが重要です」

AERA 2022年6月20日号より
AERA 2022年6月20日号より

 労働組合「東京管理職ユニオン」執行委員長の鈴木剛(たけし)さんは、希望退職や退職勧奨などの意味をまずは正確に知ってほしいと言う。

「よく『クビになった』といって慌ててユニオンに相談に来られる人がいますが、希望退職も退職勧奨も『解雇』ではありません。希望退職は希望しなければ手を挙げなければいいだけですし、退職勧奨は辞めたくなければ断ればいいだけ。しかし、労働者に知識がないので、なし崩し的に言われるまま辞めることになる人が少なくありません」  鈴木さんによれば、重要なのは辞めたくないならファーストコンタクトで断ることだ。会社側は退職を強制できず、大勢で取り囲んだりしつこく応募を迫ったりすれば、違法な退職強要になり得る。

AERA 2022年6月20日号より
AERA 2022年6月20日号より

「退職を拒否すると、慣れない業務に異動させられたりするケースもあります。しかし、例えば元の会社に籍を残したまま別会社で働く出向は、労働契約法で乱用してはならないとなっています。いずれにしても、納得がいかない場合は、労働組合や各地の労働局、弁護士らに相談してほしい」(鈴木さん)

(編集部・野村昌二)

AERA 2022年6月20日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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