日本経済の足元の状態は春先までの明るさはもはやない。「失われた30年」もそろそろ抜け出せるのではないかという淡い期待は打ち砕かれた。

 バブル崩壊後の30年を振り返ってみれば、日本経済の復活は何度も逃げ水のように消えていった。

 20年前にITバブルが世界で起こり、日本もそのおこぼれを少しはもらった。だがGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック=現メタ、アマゾン)のような巨大IT企業は残念ながら今もって日本では生まれてこない。

 08年に世界経済がリーマン・ショックで急減速した時も日本経済は世界と一緒に減速したが、主要国が財政出動と金融緩和でしだいに経済を蘇(よみがえ)らせたのに、日本は大きく出遅れたままである。

 一方、主要先進国や新興国はこの30年間、アップダウンがあるにしろ成長路線を歩み続けた。

 米国の名目国内総生産(GDP)は30年間で3.5倍となり、ドイツは2.3倍に増えた。中国は37倍に急拡大し、日本を抜いて世界第2位の経済大国となった。日本だけが1.5倍の成長にとどまり、世界に取り残された格好だ。

純利益が過去最高となった主な企業(AERA2022年6月13日号より)
純利益が過去最高となった主な企業(AERA2022年6月13日号より)

■取り残された日本

 その典型が賃金である。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本の平均賃金424万円(1ドル=110円)は加盟35カ国中22位。米国や英国の賃金が30年間で四十数%も増えたのに日本は4.4%増にすぎず、ほぼ横ばいの状態だ。

 お隣の韓国にも日本は15年に抜かれ、いまでは38万円の差をつけられている。

「新しい資本主義」を標榜(ひょうぼう)する岸田文雄首相は今年の春闘に向けて「業績がコロナ前の水準を回復した企業には3%を超える賃上げを期待する」と経済界に呼びかけたが、結果は芳しくなかった。

 連合によると今年の賃上げ率は定期昇給込みで2.10%。中小企業に限れば2.02%とさらに低い。4月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比2.1%増だったので、実質的には賃上げはなかったに等しい。

 最高益を記録した企業決算だったが、やはり今年も働く人の生活を楽にする賃上げは実現しなかった。

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