例えば、2021年下半期に直木賞をとった米澤穂信は、01年の角川学園小説大賞からデビューした。ヤングミステリー&ホラー部門の奨励賞受賞作となった「氷菓」は京都アニメーションから12年にTVアニメ化され、大ヒット作となった。

 中国では、ラノベ自体、一大ジャンルとして認知されている。

「『テンセント』が運営する中国の投稿サイトは、日本の『なろう』の10倍以上の規模があり、いまや中国発のあらゆるメディアミックスの原点として機能しているといっても過言ではありません」

 津田さんは日本でもそれは変わらず、ラノベ投稿サイトは、老若男女を問わない表現の場だと語る。

「投稿サイトには小中学生もいれば、80歳以上の作家もいます。たとえば、戦争中の実体験を書かれている方もいます。物語を書いて投稿するということは、書籍化を目指す修行の場というより、趣味の一大ジャンルです。誰に迷惑をかけるわけでもない、誰もが気軽にチャレンジできる、大衆娯楽の原点だと思います」

(ライター・河嶌太郎) 

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