特性を生かせる場も探す。プログラミングが得意な幸太くんは居場所カフェの「スクラッチの会」に馴染み、友だちと趣味でつながる/撮影協力:ぼっとう&よはく(撮影/山本倫子)
特性を生かせる場も探す。プログラミングが得意な幸太くんは居場所カフェの「スクラッチの会」に馴染み、友だちと趣味でつながる/撮影協力:ぼっとう&よはく(撮影/山本倫子)

 幸太くんが小1の6月頃から教室で過ごせなくなった時、教育支援センターで学校外の居場所がないか相談し、通所の手続きをした。学校の先生とのパイプ役を友美さんが担い、細々と学校とつながり続けたことで、幸太くんは徐々に学校に行ける日が増えていった。

「私が対処する時間を持てなかったら、子どもが支援を受けられず困り続けたと思う。母親が仕事で忙しいと学校の合理的配慮をもらえないなら、障害児の家族が困り続けてしまう。実質的に学内外の教育や支援と家庭とを『つなぐ存在』が欲しいです」(友美さん)

 預け先がなくなる「中1の壁」や「18の壁」もある。

 シングルマザーの女性(44)は、都内でダウン症がある息子(7)と二人暮らし。現在は制限付きながら、フルタイムで働いている。父母は他界し日常的に頼れる親族はいない。週2回残業のため、ベビーシッターを頼んでいる。

 障害のある中高生は、当面の居場所として放課後等デイサービスを使う場合もあるが、夏休みなどの長期休暇は午後4時までなどと開所時間が短く、フルタイムとの両立が厳しい。ベビーシッターも、通常想定されているのは小学6年生までだ。女性は言う。

「息子は小学生になったばかりなのに、今の心配事は、息子が中高生以降になった時の居場所の確保なんです」

■成人期の居場所少なく、フルタイムでは働けない

 高校卒業後の「放課後」の居場所問題はさらに深刻だ。都内に住む男性(45)は非常勤の公務員で、看護師の妻と共働き。双子の息子たち(19)は2人とも障害児。今春、学習障害のある長男は大学生になった。次男は軽度の知的障害と身体障害があり、週に5日就労継続支援B型に通う。施設で過ごすのは午後3時半まで。男性は言う。

「次男の通う就労施設が、青年・成人期の余暇活動を週1回開いてくれる。施設の『持ち出し』だと聞きます。どこの法人もやりたがらないそうです」

 障害児保育や特別支援教育に詳しい鎌倉女子大学児童学部教授の小林保子さんはこう指摘する。

「成人期を迎えた障害のある方が家庭外で過ごすアフター5の居場所がないのは、余暇の場所が福祉制度でカバーされていないから。就労後も余暇を楽しめるよう福祉サービスとして事業所利用が延長できるようにしたり、安全な余暇の居場所を作ったり、制度化が必要です。余暇のあり方は、本人のQOL(生活の質)に一番影響しますし、家族全体のQOLにもつながります」

(ノンフィクションライター・古川雅子)

AERA 2022年5月30日号