発達障害は多種多様。必要な支援を発信するため、友美さん(左)は学校、教育委員会、福祉や医療機関を駆け回り、幸太くんが過ごしやすい環境を整えている(撮影/山本倫子)
発達障害は多種多様。必要な支援を発信するため、友美さん(左)は学校、教育委員会、福祉や医療機関を駆け回り、幸太くんが過ごしやすい環境を整えている(撮影/山本倫子)
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 育児と仕事の両立支援制度は整ってきたが、それらは健常児を想定したもの。障害児は一定の年齢になったからといってケアが不要になるわけではなく、働く親たちは、もがき続けている。AERA 2022年5月30日号の記事から紹介する。

【障害児・疾患児を育てる親が仕事との両立で困ったこと】

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 半日近く流しっぱなしのシャワー。目が飛び出るほど高い水道代。

 都内の企業で働きながら、重い知的障害を伴う自閉症の長女(14)を育てる女性(49)は、新型コロナウイルス感染症の流行で小学校が休校になった時期、心が折れそうになった。娘は流れる水の感覚が大好きで、しぶきを眺めていると心が落ち着く。止めれば自傷行為に走る。在宅勤務中は、娘が浴室にこもるのを黙認せざるを得なかった。

 長女が中学3年になった今も、登下校の付き添いは必須だ。家、学校、放課後等デイサービス、それぞれの送迎を担当する人を8人確保し、毎月シフトを組み、毎日引き継ぎの連絡を入れて送迎を依頼している。送迎にかかる費用は、毎月十数万円に上る。

 娘が3歳の頃から預け先を探したが、保育園も幼稚園も軒並み断られた。出張も残業もできない事情を伝えると、問い合わせ窓口の部署に配属してもらえた。女性はこう話す。

「知的障害児を育てる親にとって仕事との両立は死活問題。健常児の子育てとは異なる思いもよらない出費がある。私の死後も続く子の生涯の暮らしを守るため貯金もしておきたい。何としてでも働き続けなければと思っています」

■一定の年齢になっても、登下校や留守番はできない

 国や企業の仕事と育児の両立支援制度は充実してきた。だが、健常児育児と違い、障害や医療的ケアのある子どもの育児には終わりがない。育児・介護休業法に定められた短時間勤務制度や子の看護休暇などは「3歳未満まで」「就学前まで」など期間が区切られているが、障害児は成長しても、一人で登下校や留守番ができない場合も多い。

 2021年11~12月に新聞・報道関係者でつくる「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」が「障害児・疾患児育児と仕事の両立に関するアンケート」(回答数260人)を実施した。両立で困っていることとして、半分以上の人が「自分や配偶者が倒れたら家庭が回らなくなる」と回答。回答を男女別に見ると、男性の3分の2は配偶者が就労しておらず、2割弱はパートタイム。一方、障害のある子を持つ女性は配偶者の9割以上がフルタイムだった。また、障害が重く、見守りや介助が必要な子どもを育てている家庭ほど、母親のフルタイム率が低い状況がみられた。

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