3月に開かれた中国の全国人民代表大会。中国はロシアとの距離を慎重に見極めている(写真:gettyimages)
3月に開かれた中国の全国人民代表大会。中国はロシアとの距離を慎重に見極めている(写真:gettyimages)
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 ロシアによるウクライナ侵攻から3カ月経った。戦争の終わりは見えず、核兵器の使用も現実味を帯びる。そうした中、日本はどう行動すべきなのか。AERA 2022年5月30日号は、国際政治学者の藤原帰一さんに聞いた。

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──中国やインドなどは必ずしも反ロシアではありません。人口比でみると世界の大半はロシア批判をしていないという見方もあります。

藤原:たとえばアジアで対ロ経済制裁に積極的に加わっているのは日本だけ。今は「西側とその他」という仕組みなんですね。そして「その他」もバラバラです。シンガポールやタイはロシアと手を結んではいない。中国を中心とした結束もない。韓国も中国との関係から、そう簡単に態度を決めないでしょう。

 中国はいま方向が定まっていません。ロシアとの軍事協力は強めていますが、どこまでロシアを信用し、一体となる意思があるかは不明確です。中国からすれば、ロシアは全体主義のやり方もろくに知らないし、勝てない戦争を始めた国。西側に対してはまず軍事力を強化し、攻撃しないことを明確にしつつ国内統治を強めることが大事なのに、正しい独裁のやり方すらわかっていないというわけです。

 今後、ロシアは国外からの半導体が輸入できず、兵器生産が苦しくなる。中国は対ロ協力を高めるだろうと思います。それは中ロが一体化するというよりロシアが負けて、弱体化し、混乱が起こるのを恐れるからです。西側からすれば、中国が経済的な打撃を恐れてロシアへの協力を弱めていくのが望ましい。中国をロシアからどう引きはがすかが、我々にとって一番大きな課題だろうと思います。

 インドは独自路線の国です。とはいえ旧ソ連時代からロシアとの軍事的つながりが強い。ラテンアメリカもロシアとの協力連帯からはほど遠いけど、西側とも協力しない。「西側」の世界的な広がりは限られています。

──中東やアフリカ系社会では「白人どうしの戦争だから、こんなに注目されているだけだ」という批判が見られます。

藤原:世界のさまざまな戦争について無関心があったことは事実でしょう。ウガンダ内戦とコンゴ戦争の死者数は合計で、低い推定でも400万、おそらく500万を超えますが、ちっとも知られていない。しかしウクライナ侵略は核戦争になる可能性もありますから、同じ戦争として並べることはできません。

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