子どもたちが幼稚園の頃によく作っていたお弁当を再現。身体が不自由でお箸が使えない子どもでも、手づかみで食べやすいように工夫している/江利川さん提供
子どもたちが幼稚園の頃によく作っていたお弁当を再現。身体が不自由でお箸が使えない子どもでも、手づかみで食べやすいように工夫している/江利川さん提供

「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。

【すべての子どもが遊べるインクルーシブ公園】

■指先が不器用でお箸が使えない

 GWが終わり、本格的に新年度がスタートした方も多いと思います。

 今年から幼稚園に入園されたお子さんがいるご家庭では、きっと毎日のお弁当作りも始まりますね。

 我が家の子どもたちが通った幼稚園も給食ではなくお弁当でした。当時は、身体が不自由な息子が食べやすいように、試行錯誤の連続でした。

 今回は、障害のある子どものお弁当について書いてみようと思います。

 子どもたちが通った園には、お弁当に関するルールがいくつかありました。まず、安全面からピックを使用しないこと、なるべくお箸を使うこと、時間内に完食できる量にすることなどです。

 あまり知られていないのですが、脳性まひの子どもには、「障害」というレベルではないものの、指先に不器用さが出ることがあります。当時の息子もその状態であり、フォークやスプーンは使えても、お箸はなかなかハードルが高く、周りのお子さんと同じように使うのは無理だと思いました。

■フォークもピックも禁止で「手づかみ」に

 せっかく入園できた幼稚園なのに、こんなところにも差があるのかと落ち込みましたが、本来お弁当はとても楽しい時間のはずです。何とかみんなと一緒に、同じペースで食べきれるものを考えてみようと思いました。フォークもスプーンもピックも使えないとなると、残るは手づかみです。メニューや食材が限られてしまいますが、これから少しずつお箸使いも上達するだろうと信じ、まずはレパートリーよりも食べやすさを優先しました。

 ひとつ上の次女が入園した時は、小食な彼女には「完食すること」がネックであり、大好きなハンバーグを入れることが多かったのですが、息子が食べやすいように作ると、ケチャップたっぷりのハンバーグはしばらく入れることができません。替わりにおにぎりに顔をつけたり、にんじんやいちごを星型にくりぬいたりして、次女が好むような飾りをたくさん入れ、協力してもらうことにしました。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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