映画のシーン (c)2019 -LES FILMS DE L’APRES MIDI -KHONA TALKIES-BEOFILM -MIDAS FILMES
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――映画のエンディングの先が気になります。実際に女性たちの労働組合は立ち上がったのでしょうか? 2022年の現在までに、どのような変化が起こっていますか?

 女性たちの労働組合は、無事に立ち上がりました。映画は2013年ごろを舞台にしています。およそ10年を経て、女性たちは多くの権利を勝ち取りました。労働環境の安全性もだいぶ確保され、大きな事故に遭う人もいなくなりました。産休を取ることもできるようになり、工場によっては保育施設を設備したところもあります。それはシムたちのような人たちが立ち上がり、自分たちで勝ち取ってきた権利です。ただ、新たな問題もあります。近年工場が機械化され、その操作を男性が行うようになっているんです。機械を扱う際にはやはり男性のほうが腕力があるからです。女性たちが職を失ってきています。

――映画ではシムたちの収入が「Tシャツ1日1650枚を作って、月給がTシャツ2枚分(10ドル)ほど」となっていました。改善されたのでしょうか?

 少しはよくなりました。でも賃金はTシャツ4枚ほど、2倍になった程度です。ベテランのスタッフでも1カ月100ユーロ(1万2千円ほど)ほどが実情なので、賃金面ではもっとよくしないといけないと思います。

――大手ブランドによる搾取の構図はなかなか変わりません。どのような解決法があると監督は思いますか?

 この問題は個人の消費者が何かアクションをし、劇的に変化するということはないと思います。そうしたブランドの服を買わないということは、彼女たちにとって解決法にはなりません。生産者と購入者の間にいる人たち――企業や政府の構造が変わらないと、簡単には変わらないと思います。ただ、この映画を観て「自分たちの買っている商品の裏側には、こういう人たちがいるのだ」と知ってもらうことが、まず一歩だと思います。さらにバングラデシュの工場労働者たちをトレーニングし、技能を向上させる団体を支援する、などの行動もひとつだと思います。この問題は生産者と購入者の間にいる人たちの構造が変わらないと、簡単には変わらないとは思います。

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