映画のシーン (c)2019 -LES FILMS DE L’APRES MIDI -KHONA TALKIES-BEOFILM -MIDAS FILMES
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 前作を終えたあと、労働者階級の女性たちをリサーチし始めました。そのなかで本作のヒロインのモデルとなるダリヤ・アクター・ドリに出会ったのです。この物語は彼女の経験した95%をもとにしています。ドキュメンタリーであってもおかしくないほどに、実際に工場で働く人たちに取材をし、役者にも実際に縫製のトレーニングを受けてもらい、映画にリアリティーを出しました。

――過酷な労働環境にいる主人公シムですが、単なる被害者ではなく、「行動する女性」として描かれている点に、とても心を動かされました。

 ありがとうございます。私が実際にリサーチし、インタビューした女性たちは決して「可哀想な人たち」ではなかったのです。自分のできる範囲でがんばり、「この状況を、どうにかしよう!」というエネルギーに満ちた人たちだった。それがスクリーンを通じて伝わればうれしいです。

――労働組合を立ち上げようとするシムは工場幹部や労務省の役人らに邪魔をされます。工場側と政府の癒着による弊害も描かれています。いわば国にとっての「不都合な真実」を描いていますが、制作にあたって妨害や、困難なことはありませんでしたか?

 運が良かったと思いますが、撮影はとてもプライベートな環境で行われ、政府の妨害にあうことなどはありませんでした。さらに3月からバングラデシュでも公開されているんです。国の問題を描いた作品が、バングラデシュで上映されるとは信じられません。モデルとなったダリヤと、主演のシムとドレスアップをして劇場に行き、泣きながら抱き合ってしまいました(笑)

 海外でこの映画を見てもらう機会はあると思うのですが、自分の国で、このような難しい問題を扱った映画が実際に公開され、見てもらえることは信じられないです。観客反応もとてもよく、私のメッセージが多くの人に伝わっていると思います。さまざまな階層の人が見てくれていますが、本当に見て欲しいのはシムたちのような労働階級の人々です。いま工場労働者の入場料を半額にしているんです。多くの人に見て欲しいから。

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