信州大学特任教授・山口真由さん(やまぐち・まゆ 左)東京大学法学部卒。財務省、弁護士を経て、ハーバード大学ロースクール修了。テレビコメンテーターも務める(photo 本人提供)
/教育改革実践家「朝礼だけの学校」校長・藤原和博さん(ふじはら・かずひろ)東京大学経済学部卒。リクルートを経て東京都の公立中で初の民間人校長。奈良市立一条高校でも校長を務めた(photo 本人提供)
信州大学特任教授・山口真由さん(やまぐち・まゆ 左)東京大学法学部卒。財務省、弁護士を経て、ハーバード大学ロースクール修了。テレビコメンテーターも務める(photo 本人提供) /教育改革実践家「朝礼だけの学校」校長・藤原和博さん(ふじはら・かずひろ)東京大学経済学部卒。リクルートを経て東京都の公立中で初の民間人校長。奈良市立一条高校でも校長を務めた(photo 本人提供)

 読解力は国語だけでなく、すべての勉強の土台となる。しかし、その力を伸ばすのは簡単なことではない。伸びない原因は何なのか。どうすれば真の力がつくのか。中学校や高校で校長を務め、教育現場に詳しい藤原和博さんと大学教員でコメンテーターの山口真由さんが意見を交わした。AERA 2022年4月4日号の記事から紹介(前後編の前編)。

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 国語の試験問題は読めているつもりなのに、点数は伸びない。読解力はどうしたら身につくのか、悩んでいる受験生や児童生徒は少なくないだろう。東京都で公立中学校(杉並区立和田中学校)初の民間人校長を務めるなど「教育改革実践家」として活動してきた藤原和博さん(66)と、総長賞を受賞して東京大学法学部を卒業した信州大学特任教授・山口真由さん(38)の対談は、大学受験で問われる読解力から、社会で必要とされる真の読解力まで話題が多岐に及んだ。

──おふたりは東京大学の文系出身です。受験生だった頃、読解力について得意不得意を感じていましたか。

藤原:僕は読書をしない子でした。小学校のとき読書感想文の課題図書でヘルマン・ヘッセの『車輪の下』とジュール・ルナールの『にんじん』を読んだら、あまりにも暗い内容でね。この2冊のせいで読書しなくなったんです。だから大学入試でも現代国語は苦労しました。入試の国語で通信添削のZ会でやった難問の古文がそのまま出題されて合格できましたけどね。

(大学卒業後に入社した)リクルートで出版部門を担当し、新しいタイプの出版社に模様替えして「メディアファクトリー」を創業しました(現・KADOKAWAメディアファクトリー)。出版を担当するまで芥川賞や直木賞の受賞作品を一回も読んだことがなく、編集者や作家と会話にならなくて。その頃から1年に100冊をノルマにして読書をするようになりました。

山口:私は逆にものすごい読書をする子でした。国家公務員の試験も問題文がかなり長いんですけど、私は指摘されるまでそう感じたことはなかったし、大学入試の問題文も難解だと思ったこともなかった。

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藤原和博さんが選ぶおすすめ5冊