激戦を制して第20代韓国大統領に選出された尹錫悦氏(右)が支援者を前にあいさつした/3月10日、ソウル(photo:gettyimages)
激戦を制して第20代韓国大統領に選出された尹錫悦氏(右)が支援者を前にあいさつした/3月10日、ソウル(photo:gettyimages)

■3月に特使団が訪日も

 岸田首相自民党政調会長時代、自らが外相として尽力した日韓慰安婦合意が文政権によって白紙に戻ったと聞き、激怒したという。尹氏に先入観はない一方、今夏に参院選を控え、韓国に厳しい日本の世論に配慮する必要にも迫られている。

 尹氏の日本との関わりは学生時代、大学教授の父親が日本に一時滞在していた頃、日本を訪れた程度という。町田氏は「尹氏は政治経験が少なく、できあがっていない大統領。側近集団が日韓関係についてどのようなアドバイスをするのかが鍵になる」と指摘する。

 これまでの慣例上、韓国の次期政権は日米などに特使を送ってきた。尹氏は2月3日の討論会で、大統領に就任したらまず米国、次に日本と首脳会談を行う考えを示した。特使団が3月中にも訪日する可能性がある。

 駐日韓国大使を務めた申ガク秀氏(シン・ガクス、大使在任期間2011年6月~13年5月)氏は「岸田政権も参院選で勝利するまでは簡単に身動きできないだろうが、状況をこれ以上悪化させない措置は必要だ。韓国の積極的な姿勢に、肯定的に対応してほしい。過去の問題の懸案を解決しようという立場を早期に表明してくれれば、モメンタムを生かす助けになる」と語る。李俊揆氏(イ・ジュンギュ、同16年7月~17年10月)も「今から尹氏の大統領就任直後までの雰囲気が良い状況のうちに、電光石火のように関係改善プロセスを進める必要がある。韓日関係改善の鍵は懸案に対する解決策にあるのではない。両国指導者の信頼と認識の共有、両国民の間の理解と意思疎通にあると思う」と語った。(朝日新聞記者・牧野愛博)

AERA 2022年3月21日号より抜粋