時に車いすに座り、時に仁王立ちする巻きスカート姿の男性の写真が、最近SNSを賑わせている。コンセプトは老若男女誰でも着られて、障害がある人でも着脱しやすく、かっこいい服だ。日本障がい者ファッション協会理事の平林景さんが語った。AERA 2022年2月21日号から。
【写真】おしゃれで最高にかっこいい!障害がある人でも着脱しやすいスカートやジャケットがこちら
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――2019年に一般社団法人日本障がい者ファッション協会を立ち上げた平林景さん(44)は、ユニバーサルデザインをアップデートする服を次々と世に打ち出してきた。付いた二つ名は「福祉業界のオシャレ番長」。今年秋には、自らが手がけた巻きスカート「bottom’all(ボトモール)」を引っさげてパリに挑む。
平林さんが代表理事を務める日本障がい者ファッション協会のテーマは「世界中の全ての人が、オシャレという名の自由を」。どんな思いを込めたのか。
平林:もともと根底にあったのは、福祉や障害に対する「薄暗い」「かわいそう」というイメージを変えたいという思いでした。私自身デコボコの発達特性があり、大人になってからADHD(注意欠陥・多動性障害)の診断を受けた当事者のひとりです。だから、他人ごとじゃない。暗いイメージを変えたくて、「福祉×オシャレで世の中を変える」と公言するようになりました。
■オシャレ封印した
平林:でもあるとき、車いすユーザーの方から「オシャレか、ええなぁ。でも、その気持ちは封印した」という話を聞いたんです。最初、それが理解できなかった。オシャレは自由です。自分が思うように好きにやればいい。なぜ封印するのか不思議でした。よく聞いてみると、車いすユーザーの方はそもそも試着室に入れなかったり、着てみたいなと思う服があってもひとりじゃなかなか着られなかったりすることを知りました。車いすユーザーが簡単に着られるオシャレな服があまりにも少なくて、その人は「自分の欲求のために人の手を煩わせるのが申し訳ないから、オシャレしたい気持ちを封印した」と。誰でも、例えば車いすの人でも簡単に着脱できて、オシャレなものがたくさんあればそんな感情にならなくてもいいはず。ないなら作ってみようと考えて、服作りを始めました。