ペットを愛でて、動物園や水族館で珍しい生き物に親しむ。幼いころから動物は保護すべき存在だと教え込まれてきた。だけど平気で肉や魚を食べる私たちって? AERA 2022年2月14日号の記事を紹介する。
【写真】生のアジに直接手で触れ、保育士にサポートしてもらいながら包丁を入れる園児
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「動物の命は大切にするべきだ」という意見に、誰も異論はないだろう。ペット店などで販売される犬や猫に、マイクロチップの装着を義務づける「改正動物愛護法」が今年6月に施行されるのも、ペットを安易に捨ててしまう風潮が背景にある。
その一方で、私たちは動物の命を奪い、「おいしい!」と食べてしまう。その“矛盾”は、どう納得すればよいのだろうか。
「フランスで自給自足生活のために鶏を飼っている私の友人は、動物愛護家ですが、鶏は自分で絞めて殺しています」
昨年11月、フランスでは動物虐待への厳罰化などを盛り込んだ動物愛護法が成立した。かの地で30年暮らすジャーナリストの羽生のり子さん(65)は、動物の権利についての講演会も行うNGOで共に活動する友人の“葛藤”についてこう話す。
「雄鶏と牝鶏(ひんけい)から生まれたヒヨコは、雌だけ卵を産むから取っておいて、雄鶏は若鶏の時に殺して食べちゃう。牝鶏には名前をつけるけど、雄鶏に名前をつけると情が移って殺せなくなるから、つけないそうです」
■大いに切ない、だけど
ただ一般的に、古くから肉食文化を育んできたフランスでは、動物の命をいただくことに疑問を持つ発想はそもそもないようだ、と羽生さんは言う。
「食事の前の『(命を)いただきます』という日本語の意味を説明すると、みんな『素晴らしい、大変いい習慣だ』と驚きます。フランスでは『ボナペティ(おいしく召し上がれ)』と、食べ物ではなく人に対して言うだけ。食べ物としての肉と、命としての動物が、日本に比べると離れているなと感じます」
「いただきます」という、フランス人からすると素敵な言葉がある日本。そもそもなぜ、「命は大切」と考えるのだろう。