感染対策と経済活動の両立が求められ、各職場は試行錯誤している。政府から合理的な基準を示してほしいという声も多い(photo 写真部・加藤夏子)
感染対策と経済活動の両立が求められ、各職場は試行錯誤している。政府から合理的な基準を示してほしいという声も多い(photo 写真部・加藤夏子)

 オミクロン株の影響で爆発的に増加している感染者。出勤できる人が減り、逼迫した状況に陥っている職場も多い。AERA 2022年2月7日号の記事を紹介する。

【データ】子育て中の親が働けない...!保育所の休園の現状がこちら

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 事業継続のため、現場は試行錯誤を繰り返している。だが、新規陽性者数は増える一方だ。

「このまま感染拡大が続くと、都民の10人に1人が“待機者”になる」

 そう予測するのは、統計学の専門家で政策研究大学院大学の土谷隆教授だ。1人あたりの接触を5人、10日の隔離期間をかけあわせると、2月8日には都内で最大143万人の待機濃厚接触者が発生するという。

「合理化やコロナ対策で、どこもぎりぎりの人員で回しています。10人に1人が出勤できないとなると、対応できなくなるケースも出てくるでしょう。思ってもみない影響が起きるのではないかと懸念しています」

 すでにそういう事態は、そこここで発生し始めている。

 1月20日時点で、保育所等の休園数は過去最多の327カ所。小中高校でも休校や学級閉鎖が相次ぎ、子育て中の親は自らが感染しなくても働けない状況が起きている。

 千葉大学病院では、院内の保育所の休園などにより、出勤できない医療従事者が出始めた。体調不良や濃厚接触者なども合わせると、28日時点で82人が欠勤しているという。

 公立高校に勤める20代の女性はこの2年、生徒の学校生活をいかに充実させるかを考え続けている。修学旅行の計画も、相次ぐ緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などで何度も変更を余儀なくされた。その度、保護者に文書を提出したり、下見に行ったりと業務負担が増えていった。

「なぜその場所なら大丈夫だと思ったのかを一つひとつ説明するのも大変で、ストレスで帯状疱疹になりました。でも、失われた高校生活は取り戻すことはできないし、思い出を勉強だけにしたくはなかった」

 行政の投げやりな対応にも苦労した。具体的な指示はなく、行事や対策の判断はすべて現場任せだったという。女性はこう吐露する。

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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