慶応大学の学生有志の団体「Safe Campus」がつくったピンバッジ。「私は性暴力を看過しない」という意思を示す(写真:Safe Campus提供)
慶応大学の学生有志の団体「Safe Campus」がつくったピンバッジ。「私は性暴力を看過しない」という意思を示す(写真:Safe Campus提供)

 学生時代の性被害はその後の人生に深い影を落とす。誰もが安心して学生生活を送るために立ち上がった学生たちのプロジェクトで実施したアンケートでは、性暴力に対する認識の甘さが明らかになった。AERA2022年1月31日号の記事を紹介する。

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 大学院生の時、レイプ被害に遭った小川優(ゆう)さんは、性被害が起きない教育活動をしたいとの思いから「Voice Up Japan」に加入し、「Voice Up Japan早稲田支部」と「シャベル:早稲田で性暴力の根を切る」と共同で活動する性的同意プロジェクトのチームリーダーを務め2021年6月、インターネットを通じて「大学の性被害・目撃経験の実態を調べるアンケート」を行った。半数近くが性的同意を十分理解できていない原因について(1)性的同意の概念の広さが想像を超える、(2)義務教育での性教育が限られた情報だけ、(3)性をタブー視する──この3点が大きいと語る。

「性的同意を取るには勇気がいります。そのためにも、特に性教育は義務教育の中で授業として取り上げられることが重要だと考えます」(小川さん)

 さらに、学校での性教育が十分にできていないため、家庭での性教育の負担が大きくなっているのではないかと指摘する。

「そのためにも小学生の時点で体と心の変化についてカバーし、性とは何なのか、安全で安心な性生活のあり方など段階的に触れてほしい。そうすることで、積極的に性的同意を取ることが自然にできる人が増えると思います」(同)

 Voice Up Japan早稲田支部共同代表で国際教養学部4年の蛭田ヤマダ理紗さんたちは今、性的同意ハンドブックをつくり学生への配布を目指している。

「最終目標として、すべての学生に性的同意の概念を周知させたいと思います」(蛭田さん)

 早稲田大学の他にも東京大学、北海道大学、上智大学、国際基督教大学など多くの大学で今、学生が主体となり性被害・性暴力をなくす挑戦が続いている。

■第三者の介入に注目

 慶応大学では19年11月に「Safe Campus」が発足した。その年に、同大の学生による盗撮行為など立て続けに性暴力事件が起きたのを受け、性暴力が軽視される風潮を変えたいと学生有志が集まり立ち上げた。発足人の一人で、代表の理工学部4年の佐保田(さほだ)美和さんは言う。

「学生たちの性暴力に対する認識の甘さを感じます」

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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