大人も子どもデジタルデバイスを長時間使う機会が増えているいま、近視人口の増加が懸念されている。近視は単に遠くが見えづらいだけではないリスクを抱えている。AERA 2021年11月15日号で、眼科医が解説する。
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「近視人口」が激増している。オーストラリアのブライアン・ホールデン視覚研究所は、2010年には約20億人だった近視人口が、50年には世界人口の約半分の50億人に達すると予測。うち9億3800万人が強度近視になるとの推計だ。
「これは16年に発表されたデータで、新型コロナによって近視人口の増加傾向に拍車がかかったと考えられます」
こう言うのは、二本松眼科病院(東京都江戸川区)の平松類副院長だ。
近視の大きな原因は、パソコンやスマホなどのデジタルデバイスを近くで長時間見続けることだと言われるが、コロナで「お家時間」が主になり、リモートワークやオンライン学習で大人も子どももデジタル機器を見る時間が一層増えた。20年6月、京都市では一斉休校の終了を受け、市内の小学生に視力検査を実施。結果、視力が0.7未満の子どもは、コロナ前である前年比で6%増の23%だったという。
■近視は失明リスクにも
近視が問題なのは、遠くが見えづらくなることに限らない。慢性的な頭痛、肩凝り、疲労感を招くほか、緑内障、白内障、網膜剥離(はくり)、黄斑症といった失明リスクのある病気の発症率が高くなる。日本人の中途失明原因の1位である緑内障の場合、近視でない人に比べて、軽度近視で約2倍、中等度以上の近視で3倍高くなるとの報告もある。
「近視を治す薬はなく、眼内コンタクトレンズ(ICL)といった近視の矯正治療が登場しているとはいえ、高額ですし、近視が発症に関連する緑内障などの病気のリスクが低くなるわけではありません。視力低下をこれ以上進ませない生活習慣を日々心掛けるしかないのです」
(ライター・羽根田真智)
※AERA 2021年11月15日号より抜粋