イラスト:宮野耕治
イラスト:宮野耕治

 コロナ禍でデジタルデバイスの使用が増加し、目の不調を訴える人が増えている。若者はスマホ老眼、子どもには急性内斜視の症状が見られるという。AERA 2021年11月15日号は、「目が大事」特集。

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 昨年12月に新型コロナに感染した20代の男性は、「コロナ後遺症」と同時に目のトラブルに悩まされた。発熱などの症状はごく軽症。すぐに在宅で仕事復帰したが、療養期間が明けても倦怠(けんたい)感が残った。

「ダルさが抜けず、パソコンに向かうのは2~3時間程度にして簡単な調べものやメール連絡などはベッドに寝転がってスマホでやっていました」

 2カ月ほどで倦怠感が落ち着いても同様の生活を続けた。仕事に区切りがつくと、そのままゲームをしたり動画を見たりして過ごす。スマホ使用は1日10時間以上に。目の疲れを強く感じ、画面から目を離した際に焦点が合いづらいことも増えた。やがて、近くも見えづらくなり、眼科医に相談したという。

「スマホを見過ぎている自覚はありましたが、寝れば回復するし気にしなかった。近くのものまで見づらくなり、『もしや老眼?』と思って相談しました」

 医師からは「いわゆる『スマホ老眼』」だと指摘された。「スマホ老眼」もデジタルデバイスの使い過ぎで起こる典型的な目のトラブルの一つだ。

■ゲームはさらに負担

 スマホ老眼に関する著書もあるクイーンズ・アイクリニックの荒井宏幸院長はこう解説する。

「『調節痙攣(けいれん)』とか『調節不全』と言われるピント合わせがうまくできない状態です。スマホのような小さなものを長時間凝視すると、ピントが近くに合ったまま毛様体筋という目の筋肉が固まります。視線を移しても筋肉が弛緩せず、遠くにピントが合いづらくなるのです」

荒井宏幸(あらい・ひろゆき)/医学博士、クイーンズ・アイクリニック院長、防衛医大非常勤講師。『スマホ老眼は治る!』(扶桑社)など著書多数(写真:本人提供)
荒井宏幸(あらい・ひろゆき)/医学博士、クイーンズ・アイクリニック院長、防衛医大非常勤講師。『スマホ老眼は治る!』(扶桑社)など著書多数(写真:本人提供)

 人間の目は水晶体がカメラのレンズのような役割を果たしている。その水晶体の厚さを変化させ、ピント調整に関わるのが毛様体筋だ。水晶体が加齢で固くなり、ピントを合わせづらくなる症状を「老眼」と呼ぶことから、スマホが原因で起こる同様のピント調整不全を「スマホ老眼」と呼ぶようになった。30代後半から50歳くらいの本当の老眼に差し掛かりつつある人にこの言葉を使うが、若者でも同様の症状が出る人が増えている。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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