かつてこの選挙区は、菅氏と引退した自民の土屋正忠氏との間で「土菅戦争」の異名をとる激しい攻防戦を続けてきた。長島氏の以前の地盤は隣接する東京21区だが、自民の要請で選挙区替えを強いられた。自民党東京都連の関係者はこう内情を明かす。

「希望の党から無所属時代を経て自民へ来たのですが、間を取り持ったのは菅義偉前首相と二階前幹事長でした。ベテラン議員でも自民党内では新人扱い。新天地でどれだけ支持を得られるかだ」

 両陣営とも「五分の戦い」と譲らない。同区は政権選択選挙の象徴区として、両陣営とも党の顔とも言うべき重鎮の応援がびっしりと予定される。とくに長島氏は甘利幹事長をはじめ、安倍元首相、麻生副総裁の「3A」などが応援に入ると見られている。

■選挙で気になる風向き

 迎え撃つ菅氏の陣営は相手が元民主党議員ということで、やりにくさを感じているかと思いきや、ある幹部は「もともと(長島氏は)政治的主張も振る舞いも、民主というよりも自民でしたから」とバッサリ。菅氏の支援者の間では今、「武蔵野にはリベラルの追い風が吹いている」が合言葉になっている。

 というのも、衆院選の前哨戦だった夏の東京都議選では、菅氏の全面支援を受けた新人の五十嵐衣里氏が当選。10月3日に投開票された武蔵野市長選では立憲など野党が支援する現職の松下玲子氏が再選を果たしたからだ。

「追い風」が吹き続けるかどうか投開票まで目が離せない。選挙に「風」はつきものだが、急に風向きが変わって激戦となる選挙区もある。

「細野豪志にとりましては、相手候補の派閥の長が総理総裁に就任したということで甘利幹事長が誕生し、相手候補が自民党の公認候補。非常に逆風が吹いている」

■政治生命を賭けた対戦

 19日夜、静岡県富士市で行われた細野豪志氏の個人演説会、ある選対幹部のこの演説が、今の細野氏を象徴していた。かつて民主党政権時には内閣府特命担当大臣を務めるなど、野党のリーダーとして将来を嘱望された。しかし、前回衆院選挙時のいわゆる「希望の党」騒動後は野党内での居場所を失う。

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