(c)bathysphere - To Be Continued‐Ascent film‐Chipangu‐ Frakas Productions‐Pandora Film Produktion‐Arte France Cinema
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■自分自身を見つめ直す

――現場はキャスト以外、ほぼ全員が外国人。脚本にも関わった通訳のおかげでコミュニケーションに支障はなかったが、日本の撮影現場との違いに驚きもあったという。

津田:撮影中も週休2日なんですよ。スタッフはみんな家族連れで来ていて、週に1度パーティーがあって、子どもたちとワイワイ楽しむ。最初は「演技をするうえで気持ちが切れないのかな?」と思ったけど、実はその2日で気持ちが整理できた。おかげでハードな現場でも冷静な自分を保って臨めたんです。気持ちを切らすか切らさないかは本人次第。そのくらいのスタンスで仕事をすることも大事かも、と思うようになった。

遠藤:食べ物もおいしかったですしね。中華あり、洋食あり。

津田:おいしいステーキ屋もあったよね。町も人もホテルもほどよくゆる~い感じで。

遠藤:一度、撮影が終わってホテルに戻ったら、雨で部屋の天井が抜けて一面水浸しだったこともありました。

津田:ええ!

遠藤:荷物を上に置いといたので助かりましたけど(笑)。そうしたなかで兵士役の3人と同じ釜の飯を食べて、同じ生活リズムで一つの作品に向かって進めたことは、役者として得がたい経験になりました。

――コロナ禍のいま、本作がより世界に響く物語になったのでは、と二人は言う。

遠藤:いま誰もがかつてない不安や不穏に置かれている。世界各国でヘイトや分断などが起こっていますよね。人が人によくも悪くも影響を与えている。この映画はまさに、極限の状況下で人と人が関わっていくことを描いていると思うんです。

津田:一人になった小野田さんの状況は、コロナ禍で個々が自粛している状況にも重なる気がする。結局それは「自分自身を見つめ直す」ことだから。

遠藤:やっぱり人間は一人ではどうにもならないんですよね。人と関わることで自分も成長できるし、物事が前に進んでいく。本作にはそんな人間の本質を忘れずに、というメッセージも含まれていると感じます。

◎遠藤雄弥(えんどう・ゆうや)/1987年、神奈川県生まれ。映画「ジュブナイル」でデビュー。映画「辰巳」「ハザードランプ」の公開が控える

◎津田寛治(つだ・かんじ)/1965年、福井県生まれ。映画「ソナチネ」でデビュー。主な出演作は「山中静夫氏の尊厳死」「トウキョウソナタ」など

(フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2021年10月25日号