政調会長は自民党として、どのような政策・法案を打ち出すかを集約する責任者で、政調会長が座長を務める「政務調査会」で決定された方針は、内閣が編成する予算案に反映されるなど多大な影響力を持つ。高市氏は事前に、自分が決選投票に残らなかった場合、岸田氏を支持すると表明。結果、岸田氏は河野氏に大差をつけることになった。

■野党は選挙戦いやすい

 高市政調会長のもとでは、自民党の政策は限りなく安倍政権へと先祖返りするだろう。

 前出の野党幹部は、岸田氏は穏健保守の「宏池会」の理念を封印して、総裁の椅子を手に入れたと皮肉たっぷりに語る。

「菅首相は安倍政権からの脱却を図るべく、党内人事も刷新してみせた。ある意味でそれを引き継ごうとしたのが河野氏だった。総裁選は自民党内の二つの勢力の権力争いに過ぎず、結局、安倍、麻生氏がそれに勝利したに過ぎません」

 閣僚人事でも、安倍政権時の顔ぶれが多数復活するのではないかと推測し、こう続けた。

「原発ゼロも、選択的夫婦別姓も、公文書管理も政治とカネの疑惑解明も絶対に岸田さんのもとでは達成できない。これで国民も取捨選択が分かりやすくなったと思います。ある意味で『安倍・麻生』を選ぶか否かの選挙になると思います」

(編集部・中原一歩)

AERA 2021年10月11日号