こうしたリーズナブル感のおかげで、フォートリー店をはじめ多くのお店では、連日非常に多くのお客さまでにぎわっています。
 
 もちろん、台湾、アメリカのお店でも、「ビッくらポン」をはじめ、レーンを流れるお皿には「寿司カバー・鮮度くん」(アメリカでは「Mr. Fresh」と呼んでいます)が設置されるなど、日本のお店とほぼ同じシステムで運営しています。

 実はアメリカにおいては、コロナ禍以前から、衛生上の理由で、レーンを流れるお寿司にはカバーを設置しなければならないという、日本より厳しいルールになっているんです。

 ちなみに他の回転ずしチェーンの海外店舗でも、タイでは一皿140円から420円、シンガポールでも約180円から400円と日本より高い価格で販売しているようです。

 他社のことは詳しくはわかりませんが、くら寿司の場合、アメリカの販売価格が高くなっているのは、人件費の違いが最も大きな要因です。

 アメリカでは、州ごとに最低賃金が定められていて、くら寿司のお店が一番多く(16店)出店しているカリフォルニア州では、1時間の最低賃金が、14ドル(約1500円)となっています。

 ちなみに日本の最低賃金は、全国平均で930円程度ですので、大きな差がありますよね。カリフォルニア州の最低賃金は、この5年間で、約1.5倍になっていて、お寿司の値段もそれに合わせて値上げしてきました。

 それでもお客さまに受け入れていただいているのは、お客さまの所得もそれに合わせて上がっているからということのようです。

 くら寿司では、1984年の回転寿司店の開業以来、30年以上も「一皿100円」(現在は、税込み110円)のリーズナブルな価格で、お寿司を提供し続けています。(現在は一部、価格が異なるお店もありますが)
 
 この間にはもちろん、人件費に加えて、さまざまな材料費や家賃の値上がりなどもありました。そうしたコストアップ要因を、厨房内でのロボットの活用による自動化や、ビッグデータやAIを活用した廃棄率の低減などの徹底した無駄の排除、機械にできることは機械に任せることによる省力化などの努力によって吸収して、今でも「一皿110円」でお客さまにお寿司を提供しています。
 
 くら寿司では今週金曜日から、アメリカで人気のロール寿司3種類を全国のお店で販売します。アメリカのお店では、ほとんどのお客さまが注文されるほどの人気商品です。期間限定ですので、海外旅行になかなか行けない中、この機会に日本にいながらにしてアメリカの味を堪能してみてはいかがでしょうか?

○岡本浩之(おかもと・ひろゆき)
1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長

AERAオンライン限定記事

著者プロフィールを見る
岡本浩之

岡本浩之

おかもと・ひろゆき/1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長。

岡本浩之の記事一覧はこちら