518ページに及ぶ「赤木ファイル」の1ページ目は「備忘記録」。「佐川理財局長に説明後、再修正」などと記されている
518ページに及ぶ「赤木ファイル」の1ページ目は「備忘記録」。「佐川理財局長に説明後、再修正」などと記されている
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会見する赤木雅子さん。「なぜ夫が死に追い込まれなければならなかったのか、原因と経緯を明らかにしてほしい」と訴えた(写真:Tsuno Yoshikazu)
会見する赤木雅子さん。「なぜ夫が死に追い込まれなければならなかったのか、原因と経緯を明らかにしてほしい」と訴えた(写真:Tsuno Yoshikazu)

「森友問題」にからむ公文書改ざん。その一端を示す資料が開示された。執拗に改ざんを求める財務省と、赤木俊夫さんの苦悩が記されていた。AERA 2021年7月5日号から。

【写真】会見する赤木雅子さん

*  *  *

「削除した方が良いと思われる箇所があります」
「当該箇所をマーキングしておきました」
「できる限り早急に対応願います」

 2017年2月26日午後3時48分。財務省理財局職員から近畿財務局(近財)の職員7人に、「【重要・作業依頼】貸付特例承認申請について」と題された一斉メールが送られた。

 メールには国有地が学校法人「森友学園」(大阪市)に売却された経緯が記された決裁文書が添付され、安倍晋三首相(当時)の妻・昭恵氏の発言や自民党議員の名前を含む記述などがマーキングされていた。一連の公文書改ざんの始まりだった。

 その9日前。安倍氏は国会で、「私や妻がこの土地取引に関係していれば、首相も国会議員もやめる」と断言していた。さらに2日前には、森友学園との交渉記録を巡って、財務省の佐川宣寿(のぶひさ)・理財局長(同)が国会で「近畿財務局と森友学園の交渉記録というのはございませんでした」と答弁した。冒頭のメールは、これらの関与を疑わせる箇所の削除を求めたものだった。

■財務省から執拗な指示

 近財はすぐさま動いた。

 メールが届いて1時間あまり。午後5時5分、近財幹部は「学園の概要は廃棄済み」「経緯は廃棄」などと返信した。その後も財務省から、訂正や修正の指示が執拗(しつよう)に続いた。双方のやり取りは午後9時過ぎまで続き、10本以上のメールが飛び交った。

 そして今年6月22日。この問題を巡り自死した近財職員の赤木俊夫さん(当時54)が、その経緯を職場に残した「赤木ファイル」が開示された。

 国は当初、その存在すら明らかにしてこなかった。だが、妻の雅子さん(50)が国などを訴えた昨年3月の裁判で開示を要求。これに対して国は、今年5月に存在を認め、6月23日までに開示するとしていた。

 A4全518ページにわたるファイルには、理財局と近財の職員との間でやり取りされた40通近いメールや、改ざんする部分に印をつけた元の決裁文書などが時系列で整理されていた。

 さて、冒頭のメールが送られたのは日曜日だった。

 雅子さんによると、この日は家族で神戸市の梅林公園に咲き誇る梅を見に行った。そこに上司から電話で突然呼び出された。赤木さんは急いで出勤。改ざんに加担させられたという。

 だが、赤木さんは最後まで改ざんに強く反対し、上司や本省に抵抗した。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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