■台湾などが予選辞退

 野球は最後の1枠をかけて22日から世界最終予選が行われるが、中国、台湾、オーストラリアが出場を辞退した。残ったのは3カ国だけで、やや盛り上がりに欠ける大会となりそうだ。台湾やオーストラリアは最終予選を突破できる力を十分に持った強豪チームだった。

 オーストラリアの飛び込みやカナダの体操は、すでに一部の出場枠を得ているが、追加枠を狙える予選会への選手団派遣を見合わせた。

 元ラグビー日本代表で、神戸親和女子大学の平尾剛教授(46)=スポーツ教育学=はこう指摘する。

「予選会の混乱を見ていると東京五輪は公正な大会と言えないし、スポーツ大会としての価値も損なわれています。アスリートに対しても失礼です。公平性が保たれた上で選考が行われれば、負けた選手も整理が付き、次に向かって頑張れます。ただ、今回はそうではない。言い訳はしないでしょうが、腑に落ちないだろうし、以降の競技生活にも影響を及ぼしかねません」

 出場枠を獲得したあとも、問題は山積みだ。東京五輪では、予定されていた事前合宿の取りやめや縮小が相次いでいる。内閣官房によると、全国545の自治体(交流行事のみのケースを含む)で延べ約800件の事前合宿が予定されていたが、6月初旬の段階で少なくとも122件が中止となった。それ以降も連日中止の報道がされている。事前合宿を中止するケースでは、多くが本国から直接、選手村入りする見込みだ。

 五輪など国際大会では、早ければ大会の1カ月以上前に現地や近隣国に入って合宿する。前出の松本さんが前回の2016年リオデジャネイロ五輪に出場した際は約1カ月間、米国で時差調整をしながら練習し、開幕の2週間ほど前にブラジル・サンパウロに入って合宿した。

「時差や気候に身体をなじませ、少しずつコンディションを整える。合宿ができないと、特に初代表など大舞台に慣れていない選手は強い不安を感じると思います」(松本さん)

■致命的な事前合宿中止

 平尾教授もこう語る。

「アスリートは心技体のバランスが高いレベルで保たれることでベストパフォーマンスを発揮できます。トップ選手は技術が拮抗している分、体がどれだけ現地になじんでいるか、メンタルがどれだけ仕上がっているかが勝負。事前合宿できないのは場合によっては致命的です」

 事前合宿自体は実施できても、予定していた練習パートナーを確保できないケースも多い。茨城県つくば市では7月中旬から柔道や陸上のスイス選手団を受け入れる。筑波大学の施設を貸し切り、筑波大生とも接触しないようにするという。

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