蛸島彰子は高1のとき、女性で初めて棋士養成機関の奨励会に入会した。一方、女子高では将棋部を立ち上げてコーチ役を務め、多くの部員に駒の動かし方から教えた(c)朝日新聞社
蛸島彰子は高1のとき、女性で初めて棋士養成機関の奨励会に入会した。一方、女子高では将棋部を立ち上げてコーチ役を務め、多くの部員に駒の動かし方から教えた(c)朝日新聞社

 蛸島は将棋を指す女性として、誰よりも長い道のりを歩んできた。しかし、自ら過去を振り返ることはあまりない。

「新しく気になることがあると、すぐ眠れなくなるようなタイプですけど、『あそこでひどい目に遭った』とか『素晴らしいことがあった』とか過去を回想することは少ないです。女子校のお友達同士で高校時代の話をして『ああ、そうだったね』というのはありますけどね。40代で子供が大きくなり、育児が一段落してから、九州や東北に1泊のバス旅行をしたりしています」

 東京・日出女子学園(現・目黒日大)高在学中に将棋部を作り、自らは指導者になった。おそらくは日本初の女子校将棋部だ。学校は楽しかった。しかし、棋士の養成機関である奨励会ではつらいことも多かった。

※AERA2021年6月14号より一部抜粋

(構成/ライター・松本博文)

著者プロフィールを見る
松本博文

松本博文

フリーの将棋ライター。東京大学将棋部OB。主な著書に『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

松本博文の記事一覧はこちら