ウーバーの配達員でもある土屋さんによれば、旧報酬体系は各エリアの最低賃金に沿った料金設定になっていた。しかし新報酬体系になって、最低賃金に達しないケースも出てくるのではないかと懸念する。

「ウーバー側が配達調整金額を操作して下げることも可能です。今は以前と比べて報酬が高いという人もいますが、今後下がっていくかもしれません」

■配達員が安心して稼働

 さらに土屋さんが「ブラックボックス」だと批判するのは、新たに始まった「見積料金」の表示だ。

 改定後、事前に見積料金がスマホに表示されるようになったが、実際の報酬が見積もりより高くなることもあれば、低くなることも。サポートセンターに問い合わせても「教えられません」と回答を拒否されるという。

 土屋さんは、何もわからない状態で配達するのは危険だと主張する。

「報酬が上がったり下がったりした理由は自分で想像するしかありません。モヤモヤした状態で配達していると事故リスクも高くなり、働いていてもモチベーションが上がりません」

 新報酬体系の狙いは何なのか。ウーバージャパンのPR事務局は、本誌の取材にこう回答した。

「配達員に安心して稼働してもらうため」

 例えば、ピークとオフピークの時間帯ではベース料金が異なってくることから、配達員は需要の多い時間帯を選び効率的に稼働できるようになったという。

 だが、以前は明示していた基本料金の内訳を出さなくなった理由については、

「算出に係る技術は開示しておりません」

 とだけ回答し、配達員からの苦情や問い合わせについては、

「個別のお問い合わせの有無、内容については開示しておりません」と答えた。(編集部・野村昌二)

AERA 2021年6月14日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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