突然だが、2003年が分かれ目だったと思う。

 その年の3月、SMAPのシングル「世界に一つだけの花」が発売され、大ヒットした。「そうさ僕らは、世界に一つだけの花」なのだ、だから「ナンバーワンにならなくてもいい、もともと特別なオンリーワン」。そう歌い上げるこの曲への認識が変わったのは、17年だった。

 脚本家・岡田惠和さんのインタビューを読んだ。その年、NHK朝ドラ「ひよっこ」で何も成し遂げないヒロインを描いた岡田さん。高度成長期という舞台について、こう語っていた。

「ナンバーワンもオンリーワンも特に求められてなかったと思うんですよ。そういう考え方が、いま、生きている子たちの枷(かせ)になっている気がするんです」

■国民ファーストの徹底

「世界に一つだけの花」のメッセージは、「そのままでいい」だと思っていたが、近ごろの若者は「オンリーワンになれ」と受け止め、苦しんでいるのか。岡田さんの指摘で、そう理解した。

 すっかり「自己責任」の社会で、「勝ち組」「負け組」が当たり前。それを新自由主義というらしい。生き残るには「オンリーワン」にならねばならず、「自己主張」が必需品。

 そんな時代を生きる29歳の小室さんと同い年の眞子さま。2人の文書に漂う「自分ファースト」の空気は、時代の必然。そんなふうに思う。が、ここでひとつ問題が。眞子さまは皇室のメンバーで、小室さんは眞子さまと結婚すれば、皇室と縁続きになる。そういう2人が「自分ファースト」でよいのだろうか。

 それを実践し、挫折したのが英国王室メーガン妃だとすれば、皇室はさらに厳しいに違いないと個人的には思う。戦後の皇室像を築いてきた上皇陛下と美智子さまが、徹底した「国民ファースト」だったからだ。

 18年10月、美智子さまは皇后として最後の誕生日に文書を公表した。天皇退位まで半年に迫った心境を聞かれ、こう述べた。

「振り返りますとあの御成婚の日以来今日まで、どのような時にもお立場としての義務は最優先であり、私事はそれに次ぐもの、というその時に伺ったお言葉のままに、陛下はこの60年に近い年月を過ごしていらっしゃいました」

■「アピール力」が彼の才

 長い長い「自分セカンド」の日々。それを娘の目で描写したのは、長女紀宮さま(現・黒田清子さん)だ。04年のお誕生日に公表した文書で、「公務は常に私事に先んじるという陛下のご姿勢」を語った。そのために家族の楽しみや予定が消え、残念に思うことも多々あったとした上で、こう続けた。

「そのようなことから、人々の苦しみ悲しみに心を添わせる日常というものを知り、無言の内に両陛下のお仕事の重さを実感するようになりましたし、そうした一種の潔さが何となく素敵だとも感じていました」

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