自分セカンドであることを「何となく素敵」ととらえる感性。紀宮さまには確かに受け継がれたが、眞子さまはどうだろう。昭和生まれの紀宮さまと平成生まれの眞子さま。その差はとても大きく、ましてや父を早く亡くし、苦労する母の下で育った小室さんは、「自分ファースト」という思いを支えに生きてきたのだろう。28枚に及ぶ小室文書を読了し、思ったことだ。

「文藝春秋」6月号は「小室文書が晒した『眞子さまの危うさ』」と題し、座談会を開いている。

 信州大学の山口真由特任教授(家族法)はそこで、ニューヨーク州弁護士会主催のコンペで準優勝したという小室さんの論文の話をした。タイトルは「社会的企業のためのクラウドファンディング法改正の可能性への課題と示唆」。「センスがいいです」というのが山口さんの評価だった。

 ホットイシューを選び、実務家主催のコンペに出すセンス。トレンディーにまとめる力もある。ただし突き詰めて思索するタイプではないかもしれない。「際立ったアピール力」が彼の才だとしたら、「自分を評価してくれるコミュニティにばっちりハマれば成功する方だと思います」と山口さん。

■一般と同じ自由な生活

 やはり小室さんは、「アピール力」の人。その人が入ろうとするコミュニティーは、「自分セカンド」を素敵と思う感性を求めている。その困難を国民は、日々見ているのだと思う。

 もう一人の出席者・毎日新聞編集委員の江森敬治さんは「この問題は、そもそも眞子さまが早く皇室を出たい。皇室を出て一般国民と同じ様な自由な生活がしたい、というところから出発していると思います」と語っていた。皇室典範は「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」と定める。眞子さまにとって、それは小室さんなのだ。

 紀宮さまは都庁勤務の黒田慶樹さんと結婚するにあたり、「三十六年を振り返って」という長い文書を公表した。最後に書いたのが、美智子さまはなぜつらい体験をしながらも、人への信頼感を失わないのかという話だった。そこで紀宮さまは、ある「皇后様のお言葉」を紹介、「よく心に浮かびます」とした。最後にそれを紹介する。

「人は一人一人自分の人生を生きているので、他人がそれを充分に理解したり、手助けしたりできない部分を芯(しん)に持って生活していると思う。……そうした部分に立ち入るというのではなくて、そうやって皆が生きているのだという、そういう事実をいつも心にとめて人にお会いするようにしています。誰もが弱い自分というものを恥かしく思いながら、それでも絶望しないで生きている。そうした姿をお互いに認め合いながら、懐かしみ合い、励まし合っていくことができれば……」

(コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2021年5月24日号

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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