山本晶(やまもと・ひかる)/慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授。外資系広告代理店勤務を経て、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。著書に『キーパーソン・マーケティング』(東洋経済新報社)など(本人提供)
山本晶(やまもと・ひかる)/慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授。外資系広告代理店勤務を経て、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。著書に『キーパーソン・マーケティング』(東洋経済新報社)など(本人提供)

 広告媒体としてインフルエンサーの影響力が増している。一方、これまで「中立の第三者」の立場で発信されてきた口コミの良さが薄れつつある。インフルエンサーの今後や課題は何か。AERA 2021年5月3日-5月10日合併号は、山本晶・慶應義塾大准教授に聞いた。

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 インフルエンサーのSNS上での発信が消費行動や購買にもたらす影響は、年々大きくなっています。プラットフォームが多数でき、外部環境が整いました。誰もがプラットフォームを選んで自由に発信できます。受け手側も企業発ではない情報を好んで閲覧するようになっています。

 SNSの人の往来が増え、インフルエンサーが抱えるフォロワーが多くなり、影響力も高まったことで、彼らを広告に使うのも一般的になりました。企業側からすると、利用者が多く、人目に触れる場所に広告を出したいのは当然。2021年のインフルエンサーは、広告媒体として新宿駅のようにターミナル駅化してきたと言えます。

 一方で、従来あった口コミの良さが薄れつつあります。これまでのインフルエンサーは、身近にいそうな誰かが、役に立つ、おもしろい情報を発信し、発信内容でファンを獲得していました。消費に影響を与えていたのは、「中立の第三者」としての生の情報が有用だから。しかし、広告を担う以上、完全に中立な第三者ではありえません。

 今後は、堂々とスポンサー契約をして、その人の人間的な魅力で売っていくタレント型インフルエンサーと、中立の視点こそ核となる一般消費者型インフルエンサーに二分されていくと考えます。

 今は境目があいまいで、ステマとして炎上する事例も増えています。発信者や広告企業側には「PR案件」と明記することが求められますし、受け手側も、純粋に中立な視点から発信されている場合と、そうではない場合があることを認識しなければなりません。

(構成 編集部・川口穣)

AERA 2021年5月3日-5月10日合併号よ

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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