羽生結弦(はにゅう・ゆづる)/フリーの演技はジャンプの失敗が目立った。「平衡感覚や軸を、最後まで取り切れていなかったと思います」と振り返った (c)朝日新聞社
羽生結弦(はにゅう・ゆづる)/フリーの演技はジャンプの失敗が目立った。「平衡感覚や軸を、最後まで取り切れていなかったと思います」と振り返った (c)朝日新聞社

 羽生結弦の自身8度目の世界選手権が終わった。世界王者の称号の奪還をかけた大会だったが、フリーで崩れた。ただ、羽生は後ろを向いてはいない。AERA 2021年4月12日号では、羽生結弦選手がいま最も叶えたい目標を語った。

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「確実に、平昌五輪よりもヘルシンキの世界選手権よりも、絶対にうまくなっています、羽生結弦は。ノーミスできる確率とか、ゾーンに入るのを確実に狙えるようになってきているので。今は結果が出なくて苦しいけれど、自分がトレーニングしてきたことは間違っていなかったという感触がある演技でした」

 コロナ禍のなか、ストックホルムで開催されたフィギュアスケートの世界選手権。そう語る羽生結弦(26)の胸には銅メダルが光っていた。それは期待された色とは違ったかもしれない。だからこそ、ファンを安心させるかのように、自身の手応えを何度も口にした。

 すべてが異例のなかで始まった。3月20日夕、羽生がストックホルムへと出発する直前に、最大震度5強の地震が東北地方を襲った。羽田空港へ向かう新幹線が運転見合わせとなった。

「2月にも、そして来る直前にも地震があって、家の中もぐちゃぐちゃになりつらい気持ちがありました。新幹線が止まったりして、ちょっと大変でした」

■決めたのは出発3日前

 先に到着した宇野昌磨(23)と鍵山優真(17)は、メインリンクで行われた初日練習に参加。羽生は夕方にサブリンクで調整した。リンクサイドには1年ぶりに会えたコーチのブライアン・オーサーとトレーシー・ウィルソンの姿があった。

「練習プランとしてはちょっとズレたかなと思いますが、氷ともしっかり対話できたと思いますし、良い感覚で練習を終われたかなと思います。最初はちょっと気合入りすぎで空回りみたいなものが一瞬ありましたが、今回はブライアンもトレーシーもいるのでしっかり話を聞きながら、自分のペースも守りながらやれたらと思います」

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