(写真左から)吉田大八、大泉洋、松岡茉優(撮影/加藤夏子)
(写真左から)吉田大八、大泉洋、松岡茉優(撮影/加藤夏子)

 作家・塩田武士が大泉洋を当て書きした小説『騙し絵の牙』が、ついに大泉主演で映画化される。監督の吉田大八、ヒロイン役の松岡茉優と共に、現場の様子と作品の魅力を語った。AERA 2021年3月22日号に掲載された記事を紹介する。

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 作家・塩田武士が大泉洋さん(47)を当て書きして生まれた小説『騙し絵の牙』が、吉田大八監督(57)によって映画化された。

 主演はもちろん大泉さん。原作に描かれる主人公・速水は大泉さんそのものだ。大手出版社に勤める彼は「眠そうな二重瞼」で「表情によって二枚目にも三枚目にもなる」。そして強烈な「人たらし」。映画は速水が部数低迷にあえぐ雑誌を立て直そうと、松岡茉優さん(26)演じる新人編集者・高野を同じ会社の文芸誌から引き抜くところから始まる。

大泉洋(以下、大泉):当初はですね、私をイメージして書かれた小説の映画化なわけですから、役作りなどいらないだろうと思って挑んだのです。が、おそらく、私がいままで演じたなかで一番難しい役になってしまいました。どうしてこんなことになってしまったんだろう(笑)。

吉田大八(以下、吉田)・松岡茉優(以下、松岡):あっはっは。

大泉:監督から「いまのはちょっと大泉洋っぽかったなあ」とNGを食らうわけですね。私をイメージしている小説なのですから、私らしくて何がいけないんだ?と、内心思いながら(笑)。

吉田:映画では、原作の持つ問題意識やスピリットを大事にしながら、“大泉さん”という俳優を新たに捉え直すチャンスをもらった、と考えて取り組みました。

大泉:小説とは全然違うキャラクターを監督が作ってくださって、その速水に私があらためて「なっていく」過程はすごく楽しかったですね。ちょっとした笑い方などにその人の“クセ”がやっぱり出るものですから。いつもの僕らしいお芝居じゃないから、新鮮だと思います。

松岡:私は監督から「桐島、部活やめるってよ」以来8年ぶりに声をかけていただいて、本当に嬉しかったです。現場ではずっと「大泉さんみたいになりたい」って思っていました。どんなときでもぽろっとおもしろいことを言ってくださって、場が和むんです。誰も疲れさせない。

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