AERA3月8日号の特集「中高一貫の真価」から
AERA3月8日号の特集「中高一貫の真価」から

 初の本番を迎えた大学入学共通テスト。試行調査の段階から公立中高一貫校の「適性検査」と似ているといわれてきたが──。実際はどうなのか。AERA 2021年3月8日号は「中高一貫の真価」を特集。朝日新聞社の教育情報メディア「朝日新聞EduA」と共同で、共通テストと適性検査の類似性を徹底検証した。

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 まずは、二つの問題を見比べていただこう。1月17日に行われた大学入学共通テスト(第1日程)の数学I・A、2月3日実施の東京都立中高一貫校の適性検査II(共同作成問題)である。どちらも、太郎と花子の会話文を読んだ後、設問に答えていくという形式だ。

「適性検査の会話文には解答に誘導する流れや伏線があり、それに気づけるかどうかがポイント。会話する二人の意見や立場の違いを理解できているか、コミュニケーション力を見ている面もありそうです」

 そう話すのは今年、都内の公立中高一貫校に927人の合格者を送り出した学習塾enaを展開する学究社の久保杉崇史執行役小中本部長代理だ。

■教諭も「同じ力を要求」

 2017年11月に行われた共通テストの第1回試行調査(プレテスト)では会話文がもっと長く、国語では文学作品ではなく生徒会の規約が題材になるなど、適性検査にそっくりと話題になった。それに比べると、「記述式問題が見送られ、国語の実用文が出ないなど、大学入試センター試験に近い印象」(久保杉氏)だった本番の共通テスト。それでも数学I・Aで出題された陸上競技におけるストライドとピッチの関係や、数学II・Bの読書時間といった題材は、かつての都立中高一貫校の適性検査の出題と似ているという。国語で二つの文章を比較し、論評・考察した「ノート」をもとに解いていく問題も、適性検査を連想させた。

 両者の類似性を指摘する声は、当の公立一貫校の先生からも上がっている。朝日新聞EduAのインタビューに、都立桜修館中教進路指導主任の真柴拓哉教諭は「(共通テスト本番は)単に知識を暗記して答えるパターンではなく、初めて出てくるシチュエーションに対して情報を引き出していくという設問の形式が、適性検査に近い」と答えた。京都府立洛北高校進路指導部長の山了悟教諭も「突き詰めると適性検査も共通テストも、同じ力が要求されている」と話している。

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私立中でも「適性検査型入試」増加