そもそも、公立中高一貫校の入学者選抜に使われる適性検査は、学校で教えない知識や解法のテクニックを競わせる私立中入試へのアンチテーゼとして生まれた経緯がある。公立中高一貫校の設置を可能にした学校教育法改正(1999年施行)の国会審議では、「偏差値による学校間格差を助長させない」との付帯決議がなされ、同法の施行規則に「学力検査を行わない」ことが明記された。結果、編み出されたのが適性検査だったのだ。その特徴をひと言でいえば教科横断型で、知識より思考力や表現力を測る問題だ。大学入試改革で思考力や判断力を問おうと導入された共通テストが適性検査に似たのは、必然の帰結だろう。

■中学入試の半分に拡大

 宮崎県で生まれた公立中高一貫校がほぼ全国に広がり、人気を集めるようになると、私立中でも「適性検査型入試」を行うところが増えてきた。たとえば都立の中高一貫校は高校募集を順次停止しており、そのぶん中学の定員が増えるため、応募倍率は減少傾向にあるものの、今年も平均5倍を超えた。つまり、この「狭き門」をくぐれなかった児童を迎え入れようとする私立中が増えているのだ。

 首都圏模試センターによると、今年、首都圏で「適性検査型」と称する入試を行った私立中は93校。「総合型」「思考力型」「論述型」「プレゼン型」などを含む広義の適性検査型(非教科型)入試は、昨年の149校から152校に微増した。北一成取締役教育研究所長は言う。
「教科型入試から適性検査型入試へのシフトは、国立大付属の中学にも広がっている。将来的には、公立一貫校を含め中学入試市場の半分ぐらいを適性検査型が占めるのではないか」

 同社では従来の教科型入試のほか、適性検査型の模試も小6生向けに年3回実施している。問題作成を指揮する野尻幸義教材ディレクターが言う。

「私立中の先生からは、適性検査型入試で入ってきた生徒は、中1のころは知識が少ないものの、知的好奇心が旺盛でアンテナを張っており、伸びしろが大きいと聞きます」

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6年後の大学受験でも有利なのか…