長引くコロナ禍では、治療と感染対策の両立が必須。大坪矯正歯科医院では歯科医師も衛生士もフェイスシールドを装着(撮影/写真部・掛祥葉子)
長引くコロナ禍では、治療と感染対策の両立が必須。大坪矯正歯科医院では歯科医師も衛生士もフェイスシールドを装着(撮影/写真部・掛祥葉子)
歯の表にブラケットをつけるのが一般的(左)。裏側は目立たないが、注意点もある(右)(撮影/写真部・掛祥葉子)
歯の表にブラケットをつけるのが一般的(左)。裏側は目立たないが、注意点もある(右)(撮影/写真部・掛祥葉子)
AERA 2021年2月22日号より
AERA 2021年2月22日号より

 歯科矯正は子どもがやるというイメージが強かったが、成人後に始める人が増加中だ。矯正治療で得られるメリットは多いが、歯周病ケアを怠ったまま矯正治療をすると、最悪の場合、歯を失う恐れもある。AERA 2021年2月22日号で取材した。

【写真を見る】歯科矯正は歯の表にブラケットをつけるのが一般的

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 横浜市に住む女性(43)は昨年12月にボーナスが出たタイミングで、矯正歯科で検査を受けた。

 きっかけは娘の歯科矯正だ。娘は小学校高学年から中学にかけて治療を受け、2019年10月に終了。以前の写真と比べると全く違っていて、自分もやってみたいという思いが湧き上がってきた。女性はもともと全体の歯並びが悪く、とくに上は出っ歯気味で、口が閉じにくい。右側ばかりで噛んでしまうことも気になっていた。

 娘の主治医からは「お母さんも矯正できますよ」と言われていたが、矯正器具をつけた姿を職場や近所の人に見られたら、「その年で?」と思われそうで、決心がつかなかった。だが、コロナ第3波が背中を押した。

「マスク生活は当面の間続きそう。矯正装置が隠れる今のうちにと、始めることにしました」

 歯科矯正治療は一昔前まで子どもが受けるものというイメージが強かったが、成人以降に治療を始める人が増えている。厚生労働省の「患者調査」によると、14年の20~40代の矯正患者数は全体の25%(4900人)だが、17年には約34%(6200人)と、人数・全体の割合共に増加。50歳以上での矯正患者数も増加している。大坪矯正歯科医院の大坪邦彦さんは言う。

「成人の患者さんは女性が多く、見た目を気にして受診するケースがほとんどです。ただ、歯科矯正治療にはかみ合わせがよくなる、ブラッシングがしやすくなって虫歯や歯周病を予防できるなど、見た目以外にも多くのメリットがあります。生活の質を向上させる治療であり、何歳からでも始める価値があります」

 だが、大人の歯科矯正には注意点もある。最も気をつけなければならないのは、歯周病だ。

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