——18年、Ayaseはボーカロイドを使い制作した曲を動画投稿サイトに発表する、「ボカロP」としての活動を始める。きっかけはバンドの挫折だった。

Ayase:24歳の時に、僕が身体を壊してバンドを活動休止しないといけなくなってしまったんです。それまで毎月3、4本は常にライブをしていたのに、それがパタッと無くなった。ものすごい虚無感と絶望感を抱えていました。でも、どうしても音楽は諦めきれなかった。何かできないものかと思った時に、妹が好きだったボカロの曲を聴いた。これだったら一人で曲を作れると思って、すぐに初音ミクのソフトを買いました。

■いい経験になるだろう

——19年4月に発表した「ラストリゾート」という曲をきっかけに、Ayaseは現在のYOASOBIのスタッフに声をかけられた。

Ayase:ボカロPを始めて創作意欲は満たされたものの、注目されることもなかったし、精神状態は不安定でした。それまでの僕は「絶対にバンドで成功できる」という未来しか見ていなかった。バンドが止まって「もしダメだったらどうしよう」と不安になって、心が病み散らかしていた時に作ったのが「ラストリゾート」。平成最後の日にあの曲を出して、令和に入ったら気持ちを切り替えて前に進もうと考えていた。そうして自分の気持ちの整理をつけるために作った楽曲が、結果としてYOASOBIの話をいただくきっかけになったんです。

——こうしてYOASOBIとしての楽曲制作を始めたAyaseが、インスタグラムでカバー曲の弾き語りをしていたikuraの動画を見つけ、ボーカリストとして声をかけた。

ikura:シンガー・ソングライターとして活動していたので、ボーカルだけをやるということに最初は葛藤もありました。でも、もっと歌が上手くなるためには違う人の作る曲を歌うのもいい経験になるだろうと思って、この話を受けました。

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