両教授は、日本には様々な変異タイプが十分に入り込み、すでにある種の集団免疫ができている可能性もあると考えている。

 2人が根拠として挙げるデータは二つ。一つは、東京理科大学の村上康文教授らが8月に発表した抗体検査の結果だ。

 この検査では、10代から80代までのボランティアの被験者362人ほぼ全員の検体から、感染経験があることを示す抗体反応がみられた。陽性の水準に届かなかったとしても、実は大半の人がウイルスに感染していた可能性が高い。

 もう一つは、インフルエンザの報告の少なさだ。厚生労働省によると、今シーズンの1月10日までの19週間の累計は全国で664人。過去5シーズンの平均は約35万6千人だから、0・2%にも満たない。これは、前出のとおり新型コロナへの感染で、T細胞などの免疫が活性化した結果と考えられるという。

「インフルエンザの発生率が低いことを『新型コロナの感染予防対策の成果』という人がいますが、(コロナ感染が免疫を活性化させた)『ウイルス干渉』によるものと考える方が自然で、すでに何千万人もが新型コロナに感染済みでも不思議はない。今現在の陽性・陰性を調べるだけではなく、実際にどの程度の人が過去にコロナ感染を経験しているのか、抗体検査のサンプル数を増やすなど科学的に検証を進める必要があります」(上久保教授)

 ただ、両教授は、「変異型を元に議論がなされるようになったこと自体は大きな進展」とみる。必要なのは、より多くのデータを元にした、現実的な対策だ。(編集部・大平誠)

AERA 2021年2月8日号