昨年3月ごろから欧米で多数の死者を出すなど被害が拡大した原因について、上久保教授は「ウイルスが流入する順番にカギがあった」と分析する。

「日本を含む東アジア、オセアニア、アフリカにはS、K、G型が順番に流入して人々が免疫を獲得していきました。一方、欧米にはK型がほとんど入らずいきなりG型が流行した結果、ウイルスが強毒化したのです」

 S型のウイルスに感染し、体内にその特異抗体(非中和抗体)を持つ人がG型に感染すると、体内で抗体依存性感染増強(ADE)という状態が起き、劇症化してしまうことが知られている。だがS型のあとにK型にも感染していれば、K型が免疫システムの一つである「T細胞免疫機能」を強く活性化してくれるため、G型に対しても防波堤として働くのだという。

「東アジアとオセアニアはお互いに観光客や留学生が多数行き来し、アフリカにも多くの中国人労働者が行かれたのに対し、2月に欧米に行かれた中国の方々は少なかったことが、K型が流入しなかった原因とみられます」(上久保教授)

■日本の現状「公開無し」

 様々な変異型に対して、日本は今後どのような感染対策をとればいいのか。その前提となるのは「どの変異型が、どの程度流行しているのか」だ。

 たとえば、K型で活性化された免疫の持続期間は他のコロナウイルスから推定して約10カ月とみられている。K型の流行から時間が経ち、多くの人の免疫が廃れていれば他の型への備えも弱まる。そこにQ型やN型などが入ってくると急激な感染拡大を引き起こす可能性もある。

 だが11月以降、日本からはGISAIDに感染者の検体が提出されておらず、現時点でどんな型のウイルスが入り込んでいるか確かめようがないという。

「データが公開されていないと『可能性』の話しかできず、警告を出せません。国立感染症研究所が英国の専門家のようにデータを解析して警告を出してくれればいいのですが、データを抱え込んでいるだけで国民に公開しないのであれば、税金の無駄遣いになってしまうかもしれません」(上久保教授)

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