また、有病率(人口100万人あたりの症例数)や死亡率(同死亡数)、CFR(新型コロナに罹患した集団の致死率)との比較から、感染性や毒性の強弱などを疫学的に解析した。

 その結果、2人は12月5日に出した3本目の共同論文で、疫学的に影響を与えた重要な変異は20年の3月がピークで、5月には既に頭打ちになっていたことを突き止めた。イギリスと南アフリカの変異株も、このときまでに生まれた変異型の一種だという。

「欧米G型はGR型、GH型、GV型などに分岐しました。イギリスの変異型はGR型の系統、南アフリカのものはGH型の系統です。私たちは、ウイルスの毒性は変異前のG型が最も高いことを論文で示しています。現在解析中で未発表ですが、20年秋に始まった欧州でのエピデミックの第2波は、感染性のみが上昇したGV型を含む主に4種類の変異ウイルスによるものと考えています」(上久保教授)

■流入の順番が拡大左右

 ここで私たちが理解しなければならないのは、やみくもに、イギリス発の「変異株」だけを怖がっていては感染拡大は防げない、という事実だ。

 2人の研究からは、前出の「Q型」と「N型」はともに致死率が高いなど強毒性であることが確認されている。Q型は免疫システムをすり抜ける「免疫回避型」で、N型はスパイク変異で細胞へ侵入しやすい性質を持つ。

 Q型はシンガポールや香港で流行し、中国にも侵入している。毒性はさほどでもないが感染力が強く、欧州で第2波を引き起こしたGV型は韓国への侵入が確認されており、すでに日本に来ている可能性が高いという。

 年末から水際対策の強化に踏み切った日本政府。上久保教授らはこう話す。

「日本の水際対策は遅すぎました。雨でずぶ濡れになってから傘をさし始めたようなものです」

 とはいえ、ウイルスの侵入を許していたとしてもマイナスばかりとは限らない。被害の大小は、ウイルス単体の性質だけでは決まらない面もあるからだ。

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