マスクを着用した会話はネイティブ同士でも難しいが、慣れない英語はなおさらだ。完璧な英語を話すことを目指さず、アイコンタクト、ジェスチャー、単語の繰り返しなど、あらゆる方法を駆使して伝えたい。2021年2月1日号では、マスク英会話のコツを取材した。
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「(ゴオー)ット(ゴオー)グ(ゴオー)シュ……?」
たぶん英語だと思う。何って、久々に地下鉄の中で外国人に話しかけられた言葉のことだ。パードン? ワット?など、知っている限りの聞き返しの言葉を発してみるが、話は1ミリも進まず。唯一通じたジェスチャー、「バイバイ」を使って逃げるように地下鉄を降りた。
電車の騒音や、自分の英語力のなさもあるんだろうが、たぶん大きいのはコレ。お互いしていたマスクのせいだ。声はくぐもるわ、おまけに顔がほとんど隠れているから、表情もわかりにくい。何かに困ってるのか、ただのフレンドリーな雑談なのか。それすらわからない。
「欧米では、マスクをすることがそもそもなかったですからね。声がこもったり、表情がよく見えないことで、戸惑う場面はけっこうあります」
そう話すのは、米国テキサス州在住で、『写真と動画で見る ジェスチャー・ボディランゲージの英語表現』の著書もあるランサムはなさんだ。
「私もマスクのままドライブスルーのマイクで注文をしたら、何度も聞き返されたり。近所のスタバでバイトする知り合いは『注文を聞き返すとマスクを外して言い直すから、マスクの意味がない』と嘆いてました」
なんだ、ネイティブ同士も苦労していたのね。いつか外国人観光客が日本に戻ってくる日が来たとしても、しばらくはマスク着用になる可能性は大きい。そこで、マスク英会話のコツを探ってみた。
まず、東京都による「外国人おもてなし語学ボランティア」の育成講座で英語の講師を務めてきた金井さやかさんが言う。
「日本人は表情の変化が少なく声も小さい人が多い。それがマスクでますます伝わりづらくなる。コロナ禍では顔を真正面に向けるのを避けることも多いので、なおさらです」