そこで、金井さんがすすめるのが「2割増し」のワザだ。まずは目をいつもより2割増しで大きく見開く。アイコンタクトだけなら、コロナ禍でも濃厚接触にならない。相手にわかりやすく視線を送るなど、目の表現を活用したい。また声のボリュームも2割増しを意識する。

 実は金井さんは、パントマイムのパフォーマーというもう一つの顔がある。

「顔の表情を大げさにするだけでなく、体全体で表現することにも気をつけたい。例えば、『あちら』と手で方向を指したときは、目だけで手の方向を見るのではなくて、首ごと方角を指すようにすると、グンとわかりやすくなります」

 パントマイムでは、首の動きで気持ちを表現することも。例えば首を傾けるだけで「わかりません」を表現できるなど、首と目だけで伝えられる情報も、意外に多い。オンラインの会話の時にも使えそうだ。金井さんが実演してくれた。それでも伝わらないときは……。

「マスクのあるなしにかかわらず、どうしても伝わらない時に使える手段もいくつかあります。メモを取り出して字に書いて見せたり、スマホで写真や電車の路線図を見せるなど、言葉以外の視覚情報を活用するのもひとつの手です」(金井さん)

 外国人の客も多い英国式のパブチェーンを全国に展開する「HUB」のサブマネジャー土井志帆乃さん(25)は、英語・韓国語・日本語のトリリンガル。現在勤務しているのは、「HUB秋葉原店」。インバウンドの外国人観光客は減ってしまったが、フィギュアなど趣味のショッピングのために秋葉原にやってきた日本在住のアニメ好きの外国人が、帰りにふらりと寄っていくこともあるという。

「マスクをしていると、声がこもるので、英語を母語としない国の方の英語が聞き取りにくいと感じることがありますね。私の場合はとくに、インド系の英語に弱いです」

 そんなとき、まず注意しているのが、発音だ。日本人特有の「カタカナ英語」にならないよう、LとRの違いを大げさなほどはっきり言うように気をつけている。また、抑揚が少ない日本語に比べて、リズムとイントネーションで表現することも多いのが英語。例えばHow are you? ひとつでも、areで上げて、youで下げるリズムを強調して言うようにすると、マスクでもグンと通じやすくなるそうだ。

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